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 今秋、欧米のグローバル企業からAIの活用を理由とした大規模な人員削減計画の発表が相次いだ。

 コンサルティング大手の米アクセンチュアやドイツ航空大手ルフトハンザ、顧客情報管理(CRM)ソフトウエア大手の米セールスフォースなどが数千人規模の削減方針を明らかにし、AIによる雇用の代替がいよいよ本格化したかのような印象を与えた。

 しかし、専門家や経済データは、こうした企業の公式発表とは異なる実態を示唆している。

 AIは、他の経営課題を覆い隠すための「格好の口実」に使われているのではないか、との見方が浮上している。

表向きの理由と専門家の懐疑的な見方

 一連の動きは9月から10月にかけて顕在化した。

 アクセンチュアは、AIに関するスキルを再習得できない従業員の早期退職を含むリストラ計画を発表。

 ルフトハンザはAIによる効率化を掲げ、2030年までに4000人を削減すると表明した。

 セールスフォースも、AIが業務の50%を代替可能だとしてカスタマーサポート職4000人の解雇に踏み切った。

 こうした企業の動きに対し、英オックスフォード大学でAIと労働を研究するファビアン・ステファニー助教は米CNBCの取材に対し、「現在見られる人員削減が、真の効率化によるものか非常に懐疑的だ」と語る。

 企業がAIを「スケープゴート」にすることで、人員削減のような困難な経営判断の責任をAIに転嫁していると指摘。

 AI活用の先進性をアピールすることで革新的な企業イメージを保ちつつ、人員削減の本当の理由を隠蔽できるとしている。

 その「本当の理由」としてステファニー助教が挙げるのが、新型コロナウイルス禍における「著しい過剰雇用」だ。

 パンデミック(世界的大流行)下で急成長したスウェーデンのフィンテック企業クラーナや、語学学習アプリの米デュオリンゴなどを例に、当時の過剰な人員採用が、現在の調整圧力につながっていると分析。

「『2、3年前に見込みを誤った』と言う代わりに、『AIのせいだ』と言えるようになった」と、企業側の思惑について指摘する。