米海軍横須賀基地に停泊中の米空母「ジョージ・ワシントン」上で演説するトランプ大統領の隣に立つ高市首相(10月28日、写真:AP/アフロ)
借りてきた猫のようだったのは高市効果か
敵対国、同盟国を問わず、外交交渉では「ディール外交」「数値目標」を前面に押し出してきたドナルド・トランプ米大統領にとって、今回の訪日は一味違っていた。
ホワイトハウスに外国首脳を招き入れて行う首脳会談の冒頭の公開場面では言いたい放題、ハチャメチャな発言をしてきたトランプ氏。
だが、迎賓館赤坂離宮で行われた首脳会談ではまるで「借りてきた猫のように神妙な面持ちだった」(米シンクタンクの上級研究員K氏)
むろん、高市早苗首相が冒頭の挨拶で、トランプ氏によるタイ・カンボジア国境紛争やイスラエルとハマスのガザ地区紛争の仲介を褒めちぎり、世界平和への貢献を称賛したこともあり、ご満悦だったことは言うまでもない。
高市氏の「褒めちぎり作戦」は見事功を奏したわけだ。
これに応えたのか、トランプ氏が何と、高市氏に「何か質問や疑問、要望、日本を支援するためにできることがあれば、いつでも知らせてほしい。必ず応える」とまで言ったのには、日本側も驚いたに違いない。
トランプ氏は、さらに故・安倍晋三元首相から高市氏の話を聞いていたと振り返り「あなたは偉大な首相になるだろう」とまで言い放った。
トランプ氏が初対面の高市氏に好印象を持ったことだけは間違いない。
象徴的な成功、戦略的スタートと評価
欧米メディア、特に米メディアはトランプ氏と高市氏との首脳会談をどう評価したか、整理してみる。
ポジティブに見た報道・論調は以下の通りだ。
●AP通信は会談後、トランプ氏が「この同盟こそが強さの極みだ」と述べたことを報じた。
(For Japan’s new leader, the key to connecting with Trump could be a Ford F-150 truck)
●英ファイナイシャル・タイムズ(FT)紙は、両首脳が「新たな黄金時代を迎える」と発言したことを紹介し、日米同盟の象徴的強化として評価した。
(Donald Trump and Sanae Takaichi promise ‘golden age’ for US-Japan alliance)
●ワシントン・ポスト紙は両国がレアアース・重要鉱物のサプライチェーンで協力する枠組みに合意した点を捉え、「中国に対抗する戦略的パートナーシップを深化させた動き」として注目した。
(Trump signs rare earth minerals deal with Japan ahead of China meeting)
一方、懸念を示したのは、以下のメディアだった。
●英ガーディアン紙は、高市氏が就任したばかりで、「トランプ氏および米国との関係をいかに築くかは重大な外交試金石だ」と報じ、同時に「防衛費や貿易・投資といった具体的負担が日本側に問われる」との見方を示した。
(Donald Trump and Japan’s Sanae Takaichi sign agreement to ‘secure’ rare earths supply)
●英ロイター通信は、「会談内容には具体的数値や実行スケジュールがまだ不明瞭だ」と指摘、米側が日本に対して一定の期待・要求を持っており、日本政府がその期待に応えられるかどうかを見極める必要がある、と論じている。
(What's on the agenda for US-Japan talks?)
だが、総合的にみると、米メディアは今回の首脳会談を「象徴的には成功」かつ「戦略的には前向きなスタート」と評価している。
ただし、以下のような2つのリスクが並存している点に触れている。
●日本の実行力(特に防衛費・投資・供給網強化)への懸念
●トランプ政権自体の変動性や要求型外交スタイル