松江城 写真/w.mart1964/イメージマート
(鷹橋忍:ライター)
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』では、主人公・松野トキの出生の秘密が明らかになった。松野トキのモデルである小泉セツも、他家に養女に迎えられている。今回は小泉セツの実父母、実祖父をご紹介したい。
小泉家は松江の上級士族
小泉セツは慶応4年(1868)2月4日、松江城下の島根県松江市南田町で生まれた。
実父は、松江藩の上級士族・小泉湊。
実母は、湊の妻・チエである。
セツの長男・小泉一雄の随筆『父小泉八雲』によれば、小泉湊とチエの間には、セツを含めて11人の子が誕生している。
しかし、無事に育ったのは、長男とされる氏太郎、長女のスエ、次男の武松、次女のセツ、三男の藤三郎、四男の千代之助の6人だけだった。
セツは上から数えても下から数えても、6番目の子だったという。
小泉家は、三百石取りの由緒ある家柄である。松江藩に代々仕え、組士50人を統率する番頭(ばんがしら)を担っていた。
松江藩には約千人の士分の侍がいたが、小泉家はその中でも最上位の、「上士(じょうし)」だった。
名家に生まれたセツであるが、生後8日目に、小泉家の縁戚である稲垣家の養女に迎えられている。