カンボジアの特殊詐欺グループ拠点を当局が摘発した際に押収した機器(2025年7月18日、写真:AP/アフロ)
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(川島 博之:ベトナム・ビングループ Martial Research & Management 主席経済顧問、元東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)

 カンボジアで韓国人80人が誘拐され、その中の大学生1人の死亡が確認された。遺体には拷問された跡があった。これを受けて韓国政府はカンボジアのポイペトなど一部地域への渡航を禁止した。

 先日カンボジア警察による犯罪集団の拠点への捜査が行われた際に日本人29人が保護されたが、彼らはその後日本に移送されて逮捕された。オレオレ詐欺の「かけ子」だったとされる。また先ごろ名古屋在住の中国人夫婦が逮捕されたが、彼らは日本人をだましてカンボジアに送り込む仕事をしていた。

 カンボジアには50カ所以上の詐欺拠点があり、推計で数万人から20万人が犯罪行為を行っているとされる。その国籍は中国、韓国、台湾、日本、マレーシアなどと多岐にわたるが、組織の中心に中国人がおり、当然のこととして構成員は中国人が多い。

 現在、カンボジアには数十万人の中国人が滞在しているとされるが、正確な数字は分かっていない。中国からカンボジアへは陸路で簡単に密入国できるためだ。

 ベトナムは中国からの不法入国に対して厳しく対処しているが、それでも山岳地帯の国境から多くの中国が密入国していると噂されている。中国、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ベトナムの国境は陸路でつながっており、国境付近に多くの少数民族が住んでいることから、国境管理はどの国にとっても難しい。日本人がイメージする厳格な国境管理など存在しない。