写真提供:ロイター/共同通信イメージズ

 国内市場の飽和や縮小を受け、海外進出する企業が増えている。だが、もちろんそれだけで活路が開けるわけではない。世界で売るためのポイントは何か。本連載では、国内外で調味料「クックドゥ」などの事業拡大を牽引した元・味の素マーケターの中島広数氏が、グローバルマーケティングの要諦を実務視点から解き明かした『グローバルで通用する「日本式」マーケティング 元・味の素マーケティングマネージャー直伝の仕事術』(中島広数著/日本能率協会マネジメントセンター)の内容の一部を抜粋・再編集。

 今回は、アジア駐在時代の事例とともに、マーケティングにおける「仮説・実践・検証」の重要性を解説する。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年6月27日)※内容は掲載当時のもの

正解を自分でつくり上げる

 ここまで「マーケティングとは何か」「マーケターにはどんな能力が求められるのか」といったことについて触れてきましたが、それらを踏まえたうえで最も大切なことの1つが「はじまりはいつも仮説」という考え方です。

 私たちは学生時代から試験問題を前にして、「何が正解か」をいかに素早く導き出すかという訓練をしてきたせいか、社会に出てからもつい「何が正解か」を求める癖があります。そのため若い人の中には経験のない仕事や課題を与えられると、自分で考えたり、試行錯誤するのではなく、上司や先輩に「正解」を教えてもらおうとしたり、あるいはネットを検索することで「正解」にたどり着こうとする傾向があります。

 ある経営者は若い頃、新しい部署に異動になると、その部署に置いてある過去の仕事の記録に片っ端から目を通すのを習慣としていたと言います。理由は「会社にとって初めての仕事はほとんどない」からです。つまり、自分にとっては「初めての仕事」であっても、その多くは過去に誰かがやったことがあり、会社にとっては初めての仕事ではないだけに、その記録を見れば、たいていの場合、誰かがやっており、それを参考にすれば初めてでも上手くできるからでした。