意見陳述後の会見で語る原告女性(撮影:青木美希)
「カルテを見て、医師の話が嘘だったとわかった」
2011年の東京電力福島第一原発事故の後、甲状腺がんと診断された若者たち7人(事故当時福島県居住の6〜16歳)が東京電力ホールディングスを訴えている。このうち、いわき市出身の20代女性がこの9月、初めて証言台に立った。女性によると、事故が起きる前からがんだったという医師の説明は、事実と異なっていたとみられるという。彼女の意見陳述はSNSのXで2日間に170万もリポストされ、今も拡散が続いている。彼女の言葉のどこが共感を呼んだのだろうか。
(青木 美希:ジャーナリスト)
「311子ども甲状腺がん裁判」とは
原発事故の後、福島県は福島県立医科大学に県民健康調査を委託し、事故当時18歳以下だった県民ら約38万人を対象に原則2年ごとに甲状腺検査を実施。ことし3月末現在で357人が「悪性(悪性疑い)」と判定され、302人が手術を受けた。
こうしたなか、この「311子ども甲状腺がん裁判」は、甲状腺がんと診断された若者たちが損害賠償請求訴訟を起こしたことで始まった。提訴は2022年1月。今年6月にいわき市出身の女性が原告に加わり、現在7人で計6億8200万円の賠償を求めている。
裁判では、原発事故と甲状腺がんの因果関係が争われている。被告の東電は、発見された甲状腺がんは「過剰診断」(生涯にわたって健康には影響せず無症状のものも含めて、治療を要するものと診断すること)であると主張。これに対し原告側は、国際機関の被ばく線量評価が過小であるとし、県民健康調査で見つかって手術に至った甲状腺がんのほぼすべてが手術を必要としていたことは明らかであり、過剰診断ではないと主張している。
9月17日の口頭弁論で初めて証言台に立ったのは、追加で原告になった女性である。
事故当時、女性は福島県いわき市に住んでいた。県民健康調査を最初に受けたのは、事故から2年後の2013年、中学3年生。そのときは、これ以上の詳細な検査は必要ないとされた。2回目の検査は2015年、高校2年生。このとき甲状腺に10.4mmの結節が見つかり、2次検査が必要とされる「B判定」と認定された。2次検査の穿刺吸引細胞診では「悪性(乳頭がん)」と診断。高校3年生の時、片葉切除術および中央領域リンパ節(D1)を手術した。
高校卒業後、福島県外の大学に進学したが、幻聴・幻覚・錯乱状態になるなどの激しい精神症状に苦しむようになり、通院。1年ほど前に震災によるPTSDと診断された。
福島や大阪、札幌など全国からの支援者らで約90の傍聴席が満席になるなか、女性は「そもそも」から話した。少し長くなるが、女性が涙ながらに語った内容を読んでほしい。