六ヶ所再処理工場(写真:共同通信社)

 原子力発電所は、外部からの武力攻撃に弱い。そのこと自体は広く知られるようになったが、米国のNGO「The Nonproliferation Policy Education Center」(NPEC、核不拡散政策教育センター)によるシミュレーションの結果は「韓国・古里(こり)原発が攻撃された場合、深刻な放射能汚染によって日本国内だけで避難者は1000万人に達する」という深刻な内容だった。この拡散予想を作成した専門家は、避難指示を受ける住民は日本国内で最大4000万人に達すると算出している。

 では、韓国ではなく、日本の原子力施設が攻撃対象になったら、どんな事態が起きうるのだろうか。(図版はいずれもカン・ジョンミン氏提供)

(青木 美希:ジャーナリスト)

【韓国原発攻撃シミュレーション】
① 北朝鮮のドローン攻撃で放射能拡散、日本は1000万人避難…米国の介入で戦争に
②  米国は中国・北朝鮮攻撃へ、日本は軍事協力拒否…危ないのは使用済み核燃料
③ 日本の原発施設が攻撃されたら…六ヶ所再処理工場なら最大避難者数は8920万人

「原発はミサイル攻撃などに脆弱」

 NPECの机上演習に参加した元韓国原子力安全委員長のカン・ジョンミン氏は再三にわたって、「原発はミサイル攻撃などの軍事攻撃に対して脆弱である」と警告してきたことで知られている。実は、カン氏は今回のシミュレーションで使った古里原発のほかに、独自に日本の六ヶ所再処理工場(青森県)と九州電力玄海原発(佐賀県)などの事故シミュレーションも実施している。

 その内容を見てみよう。シミュレーションは、いずれも2019年の毎月1日の気象条件データを元に計算されている。

【古里原発=今回のシミュレーション】

 古里原発では、3号機で使用済み核燃料プールの核事故が起こると想定した。ここには2019年時点で910トンの使用済み核燃料がある。プールが火災を起こした場合のセシウム137の放出量は、原子炉で核燃料がメルトダウンを起こした場合の約9倍に相当する。

 避難指示による韓国の避難者は平均850万人、最大で5000万人。日本では、平均510万人で最大4000万人に上るという。日本の場合、任意避難を含めると、最大1億1860万人。日本の総人口はシミュレーション実施の2024年時点で1億2380万人であり、ほぼすべての日本人が避難したり、避難を試みたりするようになる。