九州電力玄海原発=2024年4月撮影(写真:共同通信社)
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原発がドローンで攻撃されたらどうなるか。仮に九州電力・玄海原発(佐賀県)の3号機が攻撃を受けた場合、放射性物質の拡散により強制避難者は日本国内で平均132万人、最大で949万人に達するというシミュレーション結果をこの6月にJBpressで報告した。そのちょうど1カ月後、「玄海原発にドローン3機侵入か」という事態が実際に起きてしまった。いったい、何が起きていたのか。どのような危険があったのか。

(青木 美希:ジャーナリスト)

いったい何が起きたのか

 玄海原発での出来事が周知されたのは、突然で、内容も不透明だった。

 2025年7月26日午後10時31分。

 原子力規制委員会は緊急情報のメールとホームページ(HP)で「緊急情報 異常の有無確認中(第1報)核物質防護に係る事案について」を発表した。内容は次の通りだ。

【本件は、原子力災害対策初動対応マニュアルに定める情報収集事態に該当します。】
本日(26日)21時00分頃、玄海原子力発電所において原子力施設の運転に影響を及ぼすおそれがある核物質防護情報が通報されました。詳細は確認中です。
22時12分現在、玄海原子力発電所全号機(1号機及び2号機は廃止措置中、3号機及び4号機は通常運転中)において、設備に影響を及ぼす異常情報は入っておりません。

「情報収集事態」とは、規制委が職員を緊急招集する事態を指す。今回が初めての発表だった。また、規制委のHPでは、「!現在、緊急情報が発表されています。今後の情報に注意してください」と赤枠で囲んだ黒字で表示し、注意喚起していた。

玄海原発が事故を起こした際の拡散予測。左は2019年10月1日の気象条件の場合、右は2019年12月1日の場合(韓国原子力安全委員会元委員長・カン・ジョンミン氏作成)

 報道機関がネットで流した速報は「規制委が核物質防護情報が通報されたと発表した」というだけで、内容はまったくわからない。

 この日、玄海原発は3号機と4号機が稼働中だった。

 第1報から38分後、規制委から2回目の発表がメールとHPで行われた。タイトルは「緊急情報 異常なし(最終報)核物質防護に係る事案について」である。

【本件は、原子力災害対策初動対応マニュアルに定める情報収集事態に該当します。】
本日(26日)21時00分頃、玄海原子力発電所において原子力施設の運転に影響を及ぼすおそれがある核物質防護情報が通報されました。
23時現在、玄海原子力発電所全号機(1号機及び2号機は廃止措置中、3号機及び4号機は通常運転中)において、設備に影響を及ぼす異常情報は入っておりません。今後、特に異常情報がない限り、本報をもって最終報とします。

 何が起きたのか、わからないまま「最終報」と記載されていた。