日ASEAN協力で有望な「防災」と「国際標準」
羽生田:日ASEAN協力では、中国に対する過度な依存を低減するという意味でも資源に関する協力が重要だとみています。ただ、インドネシアにおけるニッケル開発のように、日本企業がうまく関与できなかった例もあります。
助川:エネルギーでも同様のことが生じています。タイ・カンボジア領海での共同開発も、両国の国境紛争による関係悪化で棚上げ状態になっています。天然ガス開発などにも日本企業が参画していますが、まだまだ十分ではありません。日本政府やJBIC(国際協力銀行)等の一層の支援も必要でしょう。
羽生田:私が今注目しているのが「防災」です。防災を産業にするという点では、日本にはポテンシャルがあります。ASEANをマーケットとした防災産業というのは、日本にもASEANにもよいと思うのですが、いかがでしょうか。
助川:大変良いと思います。ASEANでも、日本が地震国で、優れた耐震技術を持っていることは知られています。
例えば、25年3月にミャンマー中部ザガイン地方で発生した大地震で、1000kmも離れたタイ・バンコクも大きく揺れました。日本でいうと震度3から4程度でしたが、亀裂やひびが入った高層ビルが多数でました。
一方で、日本のゼネコンが作った建物はビクともしなかったこともあり、日本の建築基準や建築技術への信頼はますます高まりました。震災後の迅速な復旧に関するBCP(事業継続計画)とか、震災時に役立つ製品とか、防災は日本とASEANが協力できる分野だと思います。
羽生田:なかでも優先度が高いのは水害でしょうか。フィリピンでの台風による水害などがあります。
助川:タイやインドネシアでは慢性的な洪水リスクに晒されていることに加えて、勢力が増した低気圧で発生する「高潮」と気候変動による「海面上昇」などの問題があります。
洪水対策には上下水道の整備が重要になりますが、JICA(国際協力機構)の技術協力の一環として北九州市がカンボジアの上下水道整備に協力した成功事例もあります。こうした日本が培った技術や経験を、リスクを抱える他国に展開していくことが望まれます。
羽生田:もうひとつ、「国際標準」策定に関する日ASEAN協力はどうでしょうか。日本が今後国際標準戦略を進めていく中で、ASEANのニーズを聞きながら、一緒に国際標準を作り上げていくのは重要ではないでしょうか。
助川:国際標準策定の場でASEANを支援するというのは日本が役立てるところだと思います。国際標準策定では仲間作りが不可欠ですが、ASEANは10カ国、東ティモールの加盟でもうすぐ11カ国になります。日本にとってもメリットがあるでしょう。