イスラエルとハマスの停戦合意を喜ぶイスラエルの人々(写真:ロイター/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 今週、米WTI原油先物価格(原油価格)は1バレル=61ドルから63ドルの間で推移してきた。地政学リスクは残っているものの、供給過剰懸念が嫌気され、価格の上値は先週に比べ約2ドル低下している。イスラエルとイスラム組織ハマスが停戦協議の第1段階に合意したことで、原油供給への不安が後退する可能性も意識されている。

 まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの有志8カ国は10月5日「11月に日量13万7000バレルの増産を行う」と発表した。「日量50万バレル増産する」との憶測が流れていたが、10月と同水準の控えめな増産となったため、「買い」を誘った。

 OPECプラスの有志国は日量220万バレルの自主減産を9月末に完全に解除し、10月から日量165万バレルの減産分についても縮小を開始している。

 OPECプラスは4月から11月までの増産幅は日量約247万バレルになる。世界の原油生産の約2.5%に相当する規模だが、原油価格が急落する事態にはなっていない。

 加盟国の大半が既に生産能力の上限に達しているため、実際の増産は目標の約75%にとどまっていることが幸いしている。

 だが、北半球の夏場の需要期が終了したことにかんがみ、OPECプラスは今後の増産に慎重になっているようだ。OPECプラスは11月2日に会合を開き、12月の生産方針を決定する予定だ。

 OPECプラスがライバル視する米国の原油生産は堅調だ。直近の原油生産量は日量約1363万バレルと過去最高水準に肉薄している。

 米エネルギー情報局(EIA)は7日、米国の今年の原油生産量を日量1353万バレルと従来予測(同1344万バレル)から引き上げた。昨年の生産量は日量1323万バレルだった。足元の掘削活動は低調になっており、EIAは「来年の生産量は日量1351万バレルと微減にとどまる」と予測している。
  
 需要面では、中国の原油備蓄の動きに市場の関心が集まっている。