IT大手など3社以上に接触したという報道も
ただし、日産は10月3日、身売り報道について「マリノスの筆頭株主であり続ける」と否定する声明を出した。朝日新聞は、関係者の話として、日産が株の過半数は保有し続けて、クラブの経営権は手放さない方向で検討していると報じた。
日産は一方で「株主構成の強化について積極的に検討している」として一部株式の売却を検討していることを示唆する。
日刊スポーツの10月4日付記事によれば、日産はIT大手など少なくとも3社以上に接触し、横浜市に本社を置く家電量販店大手のノジマなどの感触を確かめていたという。
プロ野球では、親会社の企業名が球団に冠されているのに対し、Jクラブは地域名だけで、企業名をクラブには入れていない。2023年にJリーグのクラブ名称に企業名を認めると一部で報じられたときには、すぐに声明を出して否定している。Jリーグの理念に、地域密着による共存共栄を柱に据えるからだ。
過去には、ヴェルディ川崎(現東京V)の親会社だった読売新聞社で当時社長を務めていた渡辺恒雄氏が、Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏と、クラブの呼称などをめぐって舌戦を繰り広げたこともあった。
地域にとっても、Jクラブは大切な存在であることは間違いなく、スポーツ報知が9月29日付でスクープした身売り報道後は、横浜市が存続を要望した。
Jリーグの実情は「実業団リーグ」
実際のところ、Jリーグの有力クラブの多くは、日産のような親会社の大企業が「責任企業」として運営に携わっている。
日経新聞の9月30日付記事によれば、J1の上位は親会社の強力な支援を受けているクラブがほとんどで、関係者の話として、年10億円以上が広告費などの名目で親企業グループから拠出されていることを紹介する。記事では、Jリーグの実情は、「実業団リーグ」に近い様相だと指摘する。
プロ野球は、国税庁が1954年に出した「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」との通達により、親会社による球団の赤字補填は、広告宣伝費として損金算入することが認められている。そして、この通達は、クラブ名に企業が冠されていないJクラブの親会社にも適用されている。
Jクラブも親会社の経営が傾いたり、経営方針が変わったりすることで、経営権の譲渡も繰り返されてきた。
2004年に楽天がヴィッセル神戸、2018年にはサイバーエージェントがFC町田ゼルビアの経営権をそれぞれ取得し、2019年にはメルカリが鹿島アントラーズの大株主となった。東京ガスのサッカー部を前身としたFC東京も2021年にMIXIが筆頭株主となっている。
プロ野球のオーナー企業に近年、業績をさらに伸ばしたり、企業の認知度を向上させたりすることを狙ってIT企業が進出してきたのと同じ構図だ。