軍事パレードに出席する中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領(左)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(福島 香織:ジャーナリスト)
9月3日、北京で行われた反日反世界ファシズム戦争(第二次世界大戦)勝利80周年記念の軍事パレードは、習近平政権の今後を占ううえで、いくつかの重要なシグナルが発せられている。
まず、習近平の記念演説の中味だ。
「今日、人類は再び平和か戦争か、対話か対立か、ウィンウィンかゼロサムかの選択を迫られている。中国人民は歴史の正しい側、人類文明の進歩の側にしっかりと立ち、平和的発展の道を主張し、すべての民族と手を携えて人類運命共同体を築き上げる」
「全軍将兵は神聖な任務を誠実に果たし、世界一流の軍隊の建設を加速させ、国家主権統一、領土保全を断固として守るべきである。中華民族の偉大なる復興の実現に戦略的支援を提供し、世界の平和と発展により大きく貢献せよ」
「中国共産党の力強い指導の下で、各民族人民はマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、三つの代表重要思想、科学的発展観を堅持し、新時代の中国の特色ある社会主義の思想を全面的に貫徹し、中国の特色ある社会主義の道を揺るぎなく歩み、抵抗戦争の偉大な精神を継承し、発展させなければならない。われわれは新時代の中国の特色ある社会主義の思想を貫徹し、中国の特色ある社会主義の道を揺るぎなく歩み、抵抗戦争の偉大な精神を継承・前進させ、活力と忍耐をもって邁進し、中国式の現代化による強国建設と民族の復興の全面的前進のために団結して闘う!」
台湾を名指したわけではないが、明らかに台湾統一を実現する強い意思を示した発言だ。10年前の70周年記念の9月3日に閲兵式での演説で「中国は永遠に覇を唱えない」と強調していたのと比較しても、実に不穏な演説だ。
習近平は今回、解放軍を党と人民が信頼する英雄部隊と形容していたが、10年前の演説では「解放軍は人民の子弟兵」とし、「全軍将兵は誠心誠意人民に奉仕することが根本主旨」「祖国の安全と人民の平和な暮らしを守ることを神聖な職責として忠実に履行し、世界平和を守るという神聖な使命を忠実に執行せよ」と述べていた。解放軍兵士と人民の心理的距離は10年前より大きくなった印象だ。
この演説内容の変化は、習近平が行った軍制改革の結果、解放軍のエリート化を果たしたという自信の表れと同時に、解放軍の目下の最大任務が「人民への奉仕」から台湾統一に変わったことを示す。極端なことを言えば、人民の暮らしを犠牲にしても台湾統一が優先されるということだ。