強引な根性論がまかり通る企業風土

宮崎:年賀はがきは郵便局の主力商品です。郵便局の配達員や窓口担当の局員には、1人当たり数千枚にも上る販売ノルマが課されていました。なかなかノルマが達成できないので、手っ取り早い方法として、局員が自分のお金で年賀はがきを購入する。これが「自爆営業」です。自爆営業は広く横行していた問題です。

 自爆営業をする一部の局員は、出費を減らすために、金券ショップに持ち込んで自分が購入した年賀はがきを換金していました。年賀はがきを販売する時期になると、金券ショップに年賀はがきがずらりと並ぶ状況が当たり前になっていました。

 ある郵便局員は、多い年には1万枚を自腹で購入し、合計でおよそ60万円あまりも自爆営業をしていました。そして、できるだけ高く買い取ってくれる金券ショップを探して換金に行っていたそうです。

 金券ショップに行くと、自分と同じように年賀はがきの入った箱を抱えている、他の郵便局員だと思われる人と出くわすこともしばしばあったそうです。

 そういった人たちは、マスクやサングラスで顔を隠して売りに来ていたそうです。自腹で買ってそれを換金する行為は社内では禁止されていたので、コンプライアンス違反になってしまうからです。

 報道後、こうした年賀はがきの販売ノルマは廃止されました。ある局員は「ようやく自爆営業をしなくてよくなった」「これまでに100万円ぐらい身銭を切りました」と打ち明けました。

──ゆうパック商品の物販、お歳暮、お中元、母の日などの歳時の商品など、年賀はがき以外にも販売ノルマを課せられていた商品は多々あったと書かれています。

宮崎:会社に商品がある以上、営業目標を設定するのは当然で、社員に努力を求めることもおかしなことではありません。しかし、達成不可能な目標を設定したり、ノルマを達成できないと厳しく叱責したり、つるし上げたりすることは問題です。

 配達員は配達だけでせいいっぱいで、合間に商品の営業をする時間はなく、そもそも達成不可能なことをやらされているという印象を受けました。強引な根性論がまかり通る企業風土に問題があると思います。

 魅力的な商品を開発して販売を伸ばそうとするのが本来あるべき発想で、売れない責任を個々の現場の社員に負わせるやり方がおかしいのだと思います。