乗り換え契約の際に使われる「2年話法」

宮崎:「2年話法」は「乗り換え契約」の際に使われる営業トークの一種で、契約してから2年後に乗り換え契約をさせる営業手法のことです。

 郵便局では契約が2年以内に解約されてしまうと、担当者がもらった営業手当を返納しなければならないというルールがあるため、返納を免れるために、担当局員が「まずは2年間加入してみましょう」などと言って、2年経つと乗り換えを促すのです。2年ごとに何度も乗り換えさせる悪質なケースもありました。

 この他にも、古い契約の解約時期を遅らせることで古い保険と新しい保険を一定期間同時に入らせ、その間、二重に保険料を取るという客の意向に沿ったとはとても思えない契約も数万件に上ることが取材で明らかになりました。

──2019年7月31日に日本郵政の社長が記者会見し、およそ18万3000件あまりも顧客に不利益になった保険の契約があったと明らかにしました。同年12月27日には、金融庁と総務省が、日本郵政グループに対し、保険の新規販売を禁じる3カ月間の業務停止命令を出し、日本郵政、かんぽ生命、日本郵便の3社長が会見を開いて退任したと書かれています。不正な保険の勧誘はなくなったのでしょうか?

宮崎:3カ月の業務停止命令が出た後も、日本郵政グループは1年間にわたって保険営業を自粛しました。その間に、再発防止の仕組み作りや社員の研修などを続けました。間違いなく状況は改善されたと思います。

 しかし、後に現場の局員から「ノルマの達成を求める厳しい指導が復活した」という声も寄せられています。

 2024年には、郵政グループが、本来の目的以外には使ってはいけないゆうちょ銀行の顧客情報を保険の営業などに不正に流用した問題も発覚しています。流用した顧客情報の数はおよそ1000万人分です。

 郵政グループは問題が発覚するたびに再発防止策を発表し、その件に関しては改善されるのですが、過剰なノルマなど根本的な問題が残ったままなので、形を変えて不祥事が次々と出てきます。

かんぽ生命不適切販売問題で辞任を表明した日本郵政グループの3社長(写真:つのだよしお/アフロ)

──販売ノルマを課された配達員が、年賀はがきを売り切れなくて、自分で大量の余り分を買う「自爆営業」に関して書かれています。