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建築からAIを考えると分かりやすい

目次

 筆者は大学時代に建築を学んだ経験があります。

 建築の世界では、アーキテクト(建築家)、サポーター(構造設計や設備設計などの専門家)、ビルダー(施工チーム)の三者が協働することで一つの建物が完成します。

 建築家は全体のビジョンを描き、サポーターはその構想を実現可能にするための技術的な補強を行い、最後にビルダーが現場で形にする。

 この三位一体のモデルは、AIを理解するうえでも極めて有効な比喩になると考えました。

 現在、AIの急速な進化により、人間の役割とAIの役割をどのように再定義すべきかが問われています。

 その答えを建築の比喩で整理すると、「人間はアーキテクト」「AIはアーキテクトサポーター」「AIエージェントはビルダー」という三位一体の関係に見えてきます。

本論1:人間=アーキテクチャ

 建築においてアーキテクトは、建物の存在意義や方向性を決めます。

 例えば、商業施設を設計する際に、単に広い空間をつくるのではなく「人が自然と集まり、滞在時間が長くなる空間」を構想することが建築家の役割です。

 その問いの立て方こそが建物の価値を左右します。AI時代も同じです。

 経営者やリーダーは、AIに何をさせるかを決める「問いの設計者」としての役割を担います。

 AIが答えを提示できるのは、人間が適切に方向性を示したときに限られるのです。

 言い換えれば、AIの性能がいかに高くても、問いが不明確であれば得られる答えも曖昧になってしまいます。

 ここで重要なのは、アーキテクチャである人間は必ずしもすべての技術に精通している必要はないという点です。

 建築家が必ずしも鉄筋コンクリートの配筋計算を自ら行うわけではないように、経営者やビジネスパーソンもすべてのAI技術を理解する必要はありません。

 むしろ求められるのは、「何を実現したいのか」を具体的に描き、そのためにAIをどう活用するかを判断する力です。