マルゼンスキーに歴代最強馬の称号を

 歴代G1馬の中で生涯不敗のまま引退した馬には、クリフジ、トキノミノル、フジキセキ、アグネスタキオンがいます。

 G1レースこそ朝日杯3歳ステークスしか勝利していないし、実働10か月の戦歴でしたが、あの圧倒的な走りに衝撃を受けた私は、マルゼンスキーこそが歴代最強馬ではないか、と一人ひそかに思っています。

 父馬の世界的名馬ニジンスキーは種牡馬としても優秀ですが、マルゼンスキーはニジンスキーの最高傑作の1頭といったら言い過ぎになるでしょうか。

 種牡馬となったマルゼンスキーは、ダービー馬サクラチヨノオー、菊花賞馬ホリスキー、レオダーバンといったG1馬たちを輩出、ブルードメアサイアー(母馬の父)としてもライスシャワー(菊花賞、天皇賞・春)、スペシャルウィーク(ダービー、天皇賞・春&秋、ジャパンカップ)を誕生させています。

 マルゼンスキーの誕生から半世紀、日本競馬のレベルが上がり生産馬の中からは世界トップクラスの海外G1レースに遠征する馬が続々と誕生しています。

 レベルの向上はマルゼンスキーのように突出した馬の登場確率が低くなり、衝撃を与えてくれるような馬の誕生は少なくなりました。そうした時代だからこそ、強さと話題を提供してくれる馬の登場が待たれてなりません。マルゼンスキーのいた時代を懐かしがっている場合ではないのです。出でよ、第2、第3のマルゼンスキー! 出でよ、令和のスーパーカー!

 なお、マルゼンスキーの「マルゼン」とは馬主だった北海道の牧場主・橋本善吉の屋号ですが、善吉は2020年に96歳で亡くなりました。善吉の三女が参議院議員の橋本聖子です。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)