ペンシルベニア・エネルギー・イノベーション・サミットでデービッド・マコーミック上院議員から耳打ちされるトランプ大統領(7月15日ピッツバーグで、写真:AP/アフロ)
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 ドナルド・トランプ米大統領は先月中旬、米東部ペンシルベニア州にAIの一大開発拠点を構築するため、IT・エネルギー分野の民間企業から総額900億ドル(約13兆4000億円)超の大規模投資が行われると発表した。

 AI開発競争で中国に対する優位性を確立し、かつて鉄鋼業で栄えた地域をハイテク拠点へと変革させる国家戦略の一環と位置づけられる。

AI開発と電力確保を一体で推進

 この構想は、米カーネギーメロン大学で開催された「ペンシルベニア・エネルギー・イノベーション・サミット」で明らかにされた。

 サミットには米グーグルや米大手投資会社のブラックストーンをはじめ、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、米アンスロピック、米エクソンモービルといったIT・エネルギー大手の幹部も顔をそろえた。

 発表によると、グーグルとブラックストーンがそれぞれ250億ドル(約3兆7000億円)を投じ、AIの学習に不可欠なデータセンターとエネルギーインフラを整備する。

 米ニューヨーク・タイムズ(NY Times)によると、グーグルは州内の水力発電所2カ所の改修に別途30億ドル(約4500億円)を投じる計画も発表した。

 AIクラウドを手がける米コアウィーブも60億ドル(約9000億円)の投資を表明した。

 これらの投資は、AI開発の最大のボトルネックとなり得る「電力問題」の解決を狙いとしている。

 ペンシルベニア州は全米第2位の天然ガス産出量を誇るエネルギーの拠点であり、データセンターを電力源の隣に併設(コロケーション)することで、送電ロスを抑え、安価で安定した電力供給を目指す。

 ブラックストーンのジョン・グレイ社長は「データセンターを電力源のすぐ横に設置できることが、この地域の魅力だ」と語った。

 トランプ政権は、データセンターに必要な莫大な電力を賄うため、天然ガスや原子力発電所の新設承認を迅速化する方針を示している。