人口減が加速する中で、どう存在感を保っていくか(写真:MT.PHOTOSTOCK/Shutterstock.com)
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 今年もまもなく終戦の日。参議院選挙の余韻が残るなか、政策論議は依然として短期的な景気対策や目先の課題に傾きがちである。しかし、この時期だからこそ、より長い時間軸から日本経済の立ち位置を見直す必要があるのではないか。戦後80年という期間にとどまらず、超長期の時間軸に視座を移すことに意義がある。

 議論の出発点は、日本の総人口と経済成長の歴史的推移である。以下では、経済史の大家アンガス・マディソンの研究成果をもとに、数十年ではなく千年単位の時間軸で日本を捉えてみたい。もちろん古代にまで遡る人口の数字は確定的ではなく、学術的推計に基づくものである。それでも長期の比較を通じて人口の増減の大きな流れを捉えることは、いまの日本経済を考える上で有益なはずだ。

(平山 賢一:麗澤大学経済学部教授/東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

300万人から1億2000万人へ、2000年で人口は40倍に

 日本の総人口は、この2000年間で劇的な変化を遂げた。紀元1世紀にはわずか300万人程度だったと推計される。

 その後、律令国家の形成や中世の荘園制度を経ながら人口は徐々に増加し、近世に入ると江戸時代の治世のもとで18世紀半ばには3000万人前後に達した。第一次世界大戦前には5000万人を超え、戦後の高度経済成長期を経て、21世紀初頭には1億2000万人を上回っている。約2000年の歳月を経て、日本は人口規模を実に40倍へと拡大させてきた。

 興味深いのは、人口増加率の推移である。

 長期的にみれば、日本の人口増加率は年率幾何平均(変化率の平均)で0.5%であった。世界の他の地域でも同じ傾向が指摘できるが、安定かつ緩慢な拡大が続いてきたわけだ。

 それが昭和初期には、一時的に年率2.6%を上回る高い人口増加率を記録。1970年代までは1%程度の増加ペースを続けていた。

 ところがその後は、急速に鈍化して21世紀に入るとマイナスに転じている。

人口の世界シェアは2000年前とほぼ同水準に

 もう一つ見逃せないのは、日本の人口が世界全体に占めるシェアである。

 紀元1世紀には約1.5%程度に過ぎなかったが、江戸時代中期の1700年頃には4.5%という比較的高い比率を示した。しかし現在では再び1.5%前後にまで低下しており、結果的に2000年前とほぼ同じ比率に収斂している。

 人口シェアをみることは、世界における日本の相対的位置を考える上で欠かせない。人口という国家の基礎データの側面からみると、日本は歴史的に一定程度の位置づけにあったと総括できよう。後述する経済規模の議論と重ねれば、日本が「大きな国」であったのか、それとも「限られた一地域」に過ぎなかったのかが浮かび上がるからだ。