2025年7月6日、日本選手権、女子1500m決勝で優勝した田中希実 写真/長田洋平/アフロスポーツ
(スポーツライター:酒井 政人)
5000mは大会新で4連覇
日本陸上競技選手権の女子中長距離種目は今年も田中希実(New Balance)がひたすら強かった。
小雨のなかでスタートした女子5000mは400mを73秒で入ると、2周目に廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)がペースメーカーの前に出る。田中が追いかけて、集団から抜け出すかたちになった。
廣中と田中は1000mを2分59秒、2000mを6分00秒で通過。その後は廣中のペースが上がらない。1000m3分03秒ペースで進む集団に吸収されて、3000mは9分09秒で通過した。
残り4周で田中が前に出ると、1周68秒のラップを刻んで独走する。4000mを12分06秒、残り1周を13分50秒で通過。最後まで必死に駆け抜けて、14分59秒02の大会新で4連覇を達成した。参加標準記録(14分50秒00)を突破している田中は日本選手権で「3位以内」に入ったことで、東京世界陸上の代表が内定した。
「璃梨佳ちゃんがきつくなってきて、出て欲しいそぶりを見せたんですけど、順位を狙うレースなので、そこは心を鬼にして自分のしたいレースをしようと思いました」と田中。ペースが鈍っても、前半で先頭に立つことはなかった。その一方で、事前にプランニングしていた「ラスト4周」からのスパートで一気に勝負を決めると、大会新記録を打ち立てた。
「大会記録も頭の片隅にあって、過去に惜しいことが何回かあったんですけど、今回はチャンスかなと思っていたのでクリアできて良かったです」
日本選手権では過去2回、15分05秒台をマークしている田中。今回はついに福士加代子が2004年に樹立した大会記録(15分05秒07)を14分台に塗り替えて、笑顔を見せた。
2位は廣中で15分12秒61、3位は水本佳菜(エディオン)で自己ベストの15分13秒19だった。「Road to Tokyo 25」でターゲットナンバー(42)内につけていた山本有真(積水化学)は15分31秒56の7位と振るわなかった。日本選手権後に更新された「Road to Tokyo 25」は廣中だけでなく、水本もターゲットナンバー内に入ったため、山本は東京世界陸上代表が厳しくなった。