アストロターフィングはドイツの人工芝メーカーの名前が由来(Manfred RichterによるPixabayからの画像)
静岡県伊東市の田久保真紀市長(55)が、相当迷走しているようです。
「学歴詐称?」→「偽?卒業証書?等のチラ見」→「検察に証拠提出」→「百条委員会の開催」
現在進行形で大きく動いている問題を、イメージ誘導と情報操作の観点から検証してみます。
着任したてで発覚
この田久保市長が選出されたのは、5月25日の選挙でのこと。ついこの間で、1期目の着任直後に騒動が捲き起こっています。
同氏は前回稿でも指摘した「反対の1点突破型」典型というべき「42億円図書館反対~!」を旗印に、イメージ選挙活動を展開。
現職・小野達也候補を僅差で下して、5月29日に伊東市長に就任したばかりです。市議を2期務めていますが、首長として自治体全体を預かる経験はほぼありません。
ところが、就任直後のお披露目に相当する場で経歴を「東洋大学法学部卒」と自ら確認、市報にも示されましたが(リンク:現在は当該の記載は削除されている)、これに「待った」がかかったわけです。
いまだ着任数日目の6月初頭、すべての市議会議員宛てに「彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している」との「差出人不明の投書」があったというのです。
ことがことだけに、議会側はただちに確認に動きます。
このとき、着任直後の市長が「市議会正副議長」など責任ある関係者に卒業証書や卒業アルバムと称する、自身の卒業を証明する「ようなもの」をチラ見させていた。
これがいけなかった。
もし偽物であったとしたら、私文書偽造その他の刑事責任を問われることになるでしょう。
そんな人に「二元代表制」の一方の代表、行政トップたる「市長」を務める資格などありません。
二元代表制のもう一方、立法サイドの長たる「正副議長」に虚偽の資料を見せ、事実を偽ったとすれば、行政の長たる説明責任が果たせるわけがありません。
倫理的にも言語道断、そもそも犯罪ですから、OKにしてしまったら何でもありになってしまいかねません。
その後、6月25日の伊東市議会で、市長は杉本一彦市議(維新)から「あなたは東洋大学法学部経営法学科を卒業で間違いありませんね」と正規の場で質問を受けます。
ところが、田久保市長は「代理人弁護士に任せている」と明言を避けてしまいました。
この時点でアウトなのです。
卒業なら卒業、中退なら中退と素直に言えばいい。しかも、「誹謗中傷には毅然と対応」「法的手続きに入る」などと鼻息だけは荒い、歯切れの悪い対応に終始してしまった。
ところが、その舌の根も乾かぬうちに、本人が6月28日に東洋大学に問い合わせたところ、除籍を「把握」したとのこと。
そして、7月2日に記者会見。
「一度卒業という扱いになって、今どうして除籍になっているのかについては、確認ができ次第、示していくしかない」などと、再び摩訶不思議な言い訳が飛び出します。
これに対しては、東洋大学広報課から直ちに「除籍者に卒業証書あるいは卒業証書に類するものを発行することはございません」と全否定されてしまいました。
きちんと見れば、誰の目にも、事実と嘘の区別は明らかでしょう。ところが、問題はこの先にあるのです。
というのは、有権者の大半が「きちんと調べて判断などしない」可能性があること。
もっと言えば「有権者の大半は、ファクトチェックなど自分でするわけがない。それらしいイメージを大量に流しておけば、そうだと思い込んで票が獲れる」と、支持者や選対側がタカをくくっている可能性。
これが強く懸念されるわけです。こんな話は、議会側としては冗談にもなりません。
7月7日に「辞職勧告決議案」と「百条委員会設置」が全会一致で決議で可決されます。
さらに同じ7日、田久保市長は、伊東市民の会社社長によって「公職選挙法違反」容疑で、刑事告発もされてしまいます。
これを受けた同日夜の記者会見で、市長はあたかも潔く振舞っているかのような「イメージ」を演出してみせました。
「一度辞職の上、再選挙で民意を問う」と、ピンクのスーツで記者会見に登場して、深々と頭を下げる謝罪パフォーマンスをして見せた。
何を考えているのか?
こうした「色彩戦略」、計画的、かつかなり露骨なイメージ操作と考えられます。
刑事告発まで受けた身で「クロ」の色目は避けた方がよいわけです。
ここは「シロ」イメージで女性らしく「ピンク」で行こう・・・といったイメージ戦略がなければ、どうして「謝罪」「辞任」の記者会見に、ライトピンクの派手な衣装で登場するのか、一切説明がつきません。
これと同時に「卒業証書」「卒業アルバム」などの資料は上申書とともに「静岡地方検察庁」に提出すると主張、洗いざらい当局に見せる「潔さ」の如く振る舞います。
「私の中では本物の卒業証書だと思っている」けれど、「きちんとした捜査機関の方に調べていただいてその結果を待ちたい」。
一見すると極めて殊勝そうな対応を印象付けて、記者会見を乗り切ろうとしたことが見て取れます。