米アマゾン・ドット・コムのアンディ・ジャシーCEO(2月25日撮影、写真:ロイター/アフロ)
米巨大IT企業、アマゾン・ドット・コムのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)が先月17日、全従業員に宛てて書簡を送付した。
その内容は、生成AIの全面的な導入と活用を柱とする経営方針を表明するものだった。
ジャシー氏は書簡の中で、生成AIを「一生に一度の変革的テクノロジー」と位置づけた。顧客体験の向上とイノベーションの加速を約束する一方、AI活用による業務効率化にも言及した。
その上で、今後数年でコーポレート部門(ホワイトカラー職)の総従業員数が減少するとの見通しを初めて明確に示した。
アマゾンは世界最大級の雇用主である。
同社の方針は、AIがもたらす雇用の未来について具体的な方向性を示したものとして、産業界に大きな波紋を広げている。
狙いは「顧客体験の再創造」と「世界最大のスタートアップ」
ジャシーCEOが示したビジョンの核心は、生成AIを用いて「あらゆる顧客体験を再創造する」ことにある。書簡では、既に社内のあらゆる部門でAI活用が進む具体例を多数挙げた。
新型音声アシスタント「Alexa+(アレクサプラス)」は、より賢く高性能になった。ユーザーの質問に答えるだけでなく、代理で重要なタスクを実行できる。
また、数千万人が利用する「AIショッピングアシスタント」は、商品の発見や情報に基づいた購入決定を支援する。画像から商品を検索する「レンズ」機能や、他のEC(電子商取引)サイトの商品を代理購入する「Buy for Me」といった新機能もAIによって実現された。
この変革は、アマゾンのプラットフォームを利用する外部の販売事業者や広告主にも及ぶ。
AIツールによって商品ページの作成は容易になり、広告キャンペーンの最適化も可能になった。
クラウド部門、アマゾン・ウエブ・サービス(AWS)では、サービス群を強化している。
例えば、AIモデルのトレーニングと推論の価格性能比を高める独自半導体「Trainium2(トレーニアム2)」や、企業のAI開発を支援する「Bedrock(ベッドロック)」などだ。
アマゾンは自社をAI活用の最先端モデルと位置づけ、その基盤技術を世界中の企業に提供する戦略を鮮明にしている。
ジャシー氏が目指すのは、「顧客中心主義で、独創性に富み、迅速に行動する、世界最大のスタートアップ」のような組織である。
その実現に向け、生成AIを「強力な触媒」と捉えている。