下院で可決された「大きくて美しい法案」(7月3日、写真:AP/アフロ)

 上下院とも僅差で可決

 米国のドナルド・トランプ大統領は独立記念日の7月4日、政権の主要政策を盛り込んだ大型の減税・歳出法案に署名した。

「1つの大きく美しい法案(OBBB)」と名付けられた法案は、5月16日に上程されてから2週間余の審議を経て、7月3日、下院で僅差(賛成218票、反対214票。上院は賛成50票、反対50票だったが、J・D・バンス副大統領=上院議長=の賛成票が加わり可決)で通過、成立した。

House passes tax and immigration bill, sending it to Trump’s desk - The Washington Post

 同法案は、米人口の約1%の億万長者が1170億ドルの恩恵を受ける優遇税制措置を盛り込む一方、低所得層向け公的医療保険(メディケイド)、食料支援(フードスタンプ)など1兆ドル分の歳出削減を盛り込んだ。

 恩恵を受ける億万長者が多いのはテキサス、フロリダ、カリフォルニア、ニューヨーク各州。

 一方、予算削減のあおりを受けるのは中西部など人口過疎地域の医療施設、農業経営者、メディケイドやフードスタンプ受給者だ、との分析があり、影響を受ける黒人、ラティーノ、プアーホワイトは1700万人に上る。

 だとすれば、トランプ氏に票を入れたプアーホワイトは完全に裏切られたことになる。

Federal Tax Debate 2025 – ITEP

 加えて、気象変動を否定するトランプ政権の立場から、同対策費や電気自動車(EV)開発支援予算などを完全削除するなど、トランプ改革に立法府がお墨付きを与えた。

 EV大手のテスラを経営するイーロン・マスク氏はトランプ氏に完全にコケにされた。同氏が怒り心頭に発している気持ちは、分からなくもない。

 裏を返せば、国民世論、米議会の半数が反対する中で、トランプ氏は選挙公約通り、億万長者を優遇し、低所得層にとってのセーフティー・ネット(命綱)を断ち切ったのだ。

 (一部の造反議員を除き)与党・共和党上下両院議員はこれを是認したのである。そのツケが来年の中間選挙にどう回ってくるか。今から戦々恐々の共和党議員が少なくない。