選挙が近づくにつれ急速に「対決姿勢」に傾いた
衆院選以降の政治状況を、筆者は「2強多弱」と表現してきた。自民、公明の政権与党が過半数を割り込むほど力を失い、野党第1党の立憲民主党は「多弱」の野党を抜け出し2大政党の一翼の座を確立したものの、単独で政権を担う力はまだ足りない。
2大政党がともに十分な力を持ち得ないことで「多弱」政党の陣地が広がり、これら中小政党が2大政党の間でキャスティングボートを握れるだけの議席を得た。
今国会の序盤では、衆院選で議席を伸ばした野党第3党の国民民主党が、立憲や野党第2党の維新を差し置いて、石破政権を振り回した。
「103万円の壁」問題など、党の目玉政策を自民、公明両党に次々と突きつけ、政権の政策として取り入れるよう求めておきながら、財源については「政府・与党が考えること」と丸投げした。
要求だけ突きつけて、財源を探す責任を政権与党に押しつける無責任さには、さすがに筆者もあ然とした。
こうした同党の態度に嫌気がさしたのか、石破政権はやがて、維新との連携にかじを切った。維新の賛成によって2025年度予算の年度内成立が実現すると、維新と国民民主党との間で「邪魔をしたのは維新」「他党のせいにするな」と批判合戦が展開される場面もあった。
ところが国会も中盤になると、自民党と野党第1党の立憲民主党が直接「結ぶ」場面が目立ち始めた。高額療養費の負担限度額引き上げ凍結、年金制度改革関連法案の政府案修正……。
政権担当能力を持つ(少なくともそれが求められている)2大政党が主導権を握って政治を回し始めると、キャスティングボート狙いの「第三極」政党は存在意義を失う。
年金制度改革関連法案には、維新も国民民主党も反対した。「反対ばかりの野党第1党」をこき下ろし、自民党と連携して「対決より解決」を強調する戦略は、こうして崩れ去った。
「現実路線」的な立ち位置を失った維新と国民民主党は、終盤国会に入ると急速に「自民党との対決」路線に傾いた。
そもそも、国会でいくら自民党にすり寄っても、参院選が近づけば「野党間の選挙協力」が視野に入る。本音はどうあれ、維新も国民民主党も「野党の一員」として振る舞わざるを得ない。
立憲、維新、国民民主を含む野党7党は6月11日、ガソリン税の暫定税率を廃止する法案を衆院に共同で提出した。そればかりか、17日には法案の審議入りを拒否し続けた井林辰憲・衆院財務金融委員長(自民)の解任決議案まで衆院に提出し、18日にはなんと可決させてしまった。

「野党が結束すれば常任委員会の委員長を解任できる」現実が可視化されたなかで「では内閣不信任決議案はどうなるのか」が、改めて注目されたわけだ。