地味だが「だて」が売りの辰巳芸者。絵は「辰巳八景ノ内」歌川国貞(出典:国立国会図書館)

「深川」はどこにある

 徳川家康が江戸へ入府し、摂津国・深川八郎右衛門に隅田川河口に運河周辺の干拓を命じると、縦横に張り巡らされた運河網は材木の貯木場となり、江戸の物流の拠点となった。

 永代島と呼ばれた小島には富岡八幡宮と、その別当寺である永代寺が創建され、門前には町屋が造られ、鳥居前町として発展する。

 旧・深川区は現在の江東区の前身で、このエリアには江戸時代、『南総里見八犬伝』の戯作者・滝沢馬琴、地質学者で蘭学者・戯作者で発明家などマルチな才能を発揮した平賀源内が住居を構えていた。

 日本史上最高の俳諧師・松尾芭蕉、日本全国を測量した伊能忠敬、吉原での豪遊逸話が伝えられる大富豪・紀伊國屋文左衛門や奈良屋茂左衛門も邸を構えた。

 現在、深川地区には鉄道網が張り巡らされている。

「門前仲町駅」に東京メトロ東西線、都営地下鉄大江戸線。「森下駅」に都営地下鉄大江戸線、都営地下鉄新宿線。「清澄白河駅」に都営地下鉄大江戸線、東京メトロ半蔵門線。

「木場駅」、「東陽町駅」に東京メトロ東西線。「住吉駅」に都営地下鉄新宿線、東京メトロ半蔵門線。「越中島駅」にJR京葉線が乗り入れている。

売春稼業の3つの要件

 娼婦とは売春を行う婦女を指す。

「娼妓」、「遊女」、「女郎」、その他多くの俗称や異名があり、「公娼」、「私娼」、「密娼」、「準娼」、などに分類される。

「公娼」とは公然と認められ許可を得て稼業する娼婦で「娼妓」と称される。

「私娼」は密かなる売春を生業とし、時には黙認される場合もあるが、常に取り締まりの対象となった。

「密娼」はさらに隠れたる娼婦で、当局に対してばかりでなく、世間の目を免れて密かに売春を行うものである。

「準娼」とは売春の行われやすい場所とか、職業に従事し、臨機的に売春する娼婦をいう。

 洋の東西を問わず、都市の発達過程において新開地の形成には、まず飲食遊興の店が先行するものである。

 江戸時代の妓楼は、大部分が徳川の江戸開基と共に、江戸城の外劃周辺だけでなく市中の至る処に出現した。初めは散在的なものだったが、次第にその数を増やし、集団的地域化を呈するようになる。

 一般的に、売春は娼家や遊客の双方にとって、地理的に便利なところであること。そして、その所在が知られていること。つまり、売色稼業は「娼婦」と「その斡旋および経営者」、そして「場所」の3つを要件とする。

 それは自然的な情勢、本質的な原因に由来する。

 娼家が集団的になる理由としては、業者間の連絡協調、稼業上の自衛などからであり、そうすることで一層の繁盛が期待されるためである。