北方領土問題にも影響が
松田:その可能性もあるかもしれませんし、逆に朝鮮半島問題に忙しくて他のことができなくなるかもしれません。だから、朝鮮半島有事は韓国、日本、米国だけでなく、中国にも大きな問題を突きつけることになるでしょう。
——第2次世界大戦の末期、旧ソ連は日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、日本と戦争を始めました。そして、日本がポツダム宣言を受け入れて無条件降伏すると表明した後もソ連は侵攻をやめず、日本固有の領土である北方領土に侵攻しました。北方領土は今なお、不法占拠されたままです。ウクライナと共感する立場にあるとは言えませんか。
松田:ウクライナは主権国家そのものが存亡の危機に立たされた側面があります。一方、北方領土への侵攻は、日本が無条件降伏を受け入れた後でした。ただ、そういう違いはあるにしても、ウクライナ戦争における今後の和平交渉で、ロシアが占領した地域のロシア編入が認められてしまえば、武力で他国の領土を奪うことが国際法上許されるという間違った前例ができてしまいます。
北方領土問題の解決にもマイナスに影響するでしょう。したがって、日本はウクライナ戦争の終わり方に無関心であってはならないし、可能な限り停戦・和平交渉に参画すべきだと思います。
——日本が和平交渉に参加するとしたら、具体的にはどのような形があり得ますか?
松田:停戦監視への参画、ウクライナの安全保障強化に必要な協力、ロシアへの警戒を強める欧州との政治的対話と協力など、いろいろなことを考えていく必要があります。これまでの人道、エネルギー、財政支援とは別に、ウクライナ・欧州の問題に積極的に関与することが日本の安全保障にもプラスになると思います。
——ウクライナの復興に向けて日本ができることは何でしょうか。
松田:停戦・和平の道筋ができればという前提でいうと、貢献できる事柄はたくさんあります。復興を効率的に行うために、日本は戦後復興や自然災害からの復興で培った経験や知識を共有することができます。
行政組織のあり方、必要な人材、中央と地方の役割分担、官民の協力、復興のための資金調達など、知識を伝授するのが重要になります。がれき処理、地雷除去などに必要な機材をウクライナ国内で生産し販売する道もあります。
——やはり日本の役割は経済が主軸となるのでしょうか。