「朝鮮半島有事」とは?

松田:ロシアと北朝鮮は2024年6月、戦略的パートナーシップ条約を新たに結び、事実上の同盟関係を樹立しました。これを根拠に北朝鮮はウクライナ戦争において、武器・弾薬の提供に加えて、兵士を参戦させています。

 では、見返りにロシアから何をもらっているのでしょうか? 経済支援だけでなく、軍事支援も受ける。そこにはミサイルやドローンの技術、核の技術もあるかもしれません。さらに「21世紀型」の戦争で実戦経験を積んでウクライナから戻ってきた北朝鮮兵士が、そういう経験のない韓国軍、さらには在韓・在日米軍、そして日本と向き合うことになるかもしれないのです。

「今日のウクライナ」を超えた状況が、「明日の東アジア」で展開される可能性もあるのです。

ウクライナ大使離任のあいさつでゼレンスキー大統領に面会した松田邦紀氏(右)=2024年10月2日(ウクライナ大統領オフィシャルウェブサイトより)

——仮に朝鮮半島有事が起きるとしたら、日本はどういう立場に立たされるのでしょうか。

松田:近隣で戦争が起きたら何が起こるか? まず避難民が逃げて来ます。その地にいる日本人も巻き込まれます。それから日本周辺の海運に対するダメージが及びます。

 そうした状態で、もし、在日米軍が行動を取ったら、日本はどうするのか? 日本が中立を保とうとしても、無理でしょう。朝鮮半島であれ、台湾であれ、日本に全く影響がないということはあり得ません。

——朝鮮半島有事という事態になったら、中国はどういう動きに出るでしょう。

松田:わかりません。ただ、中国は、ウクライナ戦争に関する北朝鮮の活動が中国の安全保障にとってどういう意味を持つのかをきちんと認識すべきでしょう。また、日中両国は、北朝鮮がロシア側に立って参戦していることの意味をもっと議論すべきだと思います。

——朝鮮半島情勢が不安定になった場合、それに乗じて中国が台湾の武力統一に動く可能性はどうでしょうか。