自己実現を追求する道のり
野口氏の副業への道のりは、ご自身のキャリアにおける深い自己省察から始まりました。
20年前に花形だったシステムエンジニアに憧れ入社したものの、自分の思い描いた通りの活躍ができず苦悩する日々でした。
様々な試行錯誤の日々を送る中で、自分が一般的に良いと思う仕事を選んでいて、心からやりたいと思っていることに蓋をしていることに気づきます。
この気づきが、結果、彼を現在の副業へ向かわせていくことになるのです。
キャリアのターニングポイントは、100人以上が関わる大規模プロジェクトにおいて、彼がPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)リーダーを務めた時でした。
自身の力不足もあり多くのメンバーが苦境に立たされてしまったのです。
野口氏は、「自分の実力のなさが、この現実を引き起こしている」と悟ります。
そのプロジェクトはその後、実力ある先輩たちにより見事に立て直されていきます。
先輩たちの様子は、全精力を捧げ、魂を懸けての仕事に見えたと言います。その当時を振り返って「素直にかっこいいと思った」と野口氏は語ります。
この時初めて、「自分は仕事に何を求めているのか。どうしたら自分も先輩のようになれるのか」と真剣に問い直したそうです。
その結果、野口氏は「どんな苦境に立たされるようと、自分が折れずに魂を懸けてやれることは何なのか」という問いを立てました。
そして、自身の過去を振り返り、本当に生き生きとしてやってきたことは何かと考え続けた中で、たどり着いたのが「誰かに驚きを与え、相手の心を躍らせるエンターテインメント」だったのです。
例えば、部内におけるナレッジ共有であっても工夫を凝らし感動させる場作りをしたり、顧客への提案では、お客様の歴史から紐解く提案のポイントをドラマチックにプレゼンテーションしたり、常にエンターテインメント性を盛り込んでいました。
そして「これを仕事にできないか」と考え始めたのです。
当初、IT系の大企業においてエンジニアではなく、「エンターテインメント」という得意領域でどう勝負できるのか、野口氏ご自身も分かっていませんでした。
ところが、ある日会社にあるショールームの存在を知ったときに、これだとピンと来たと言います。
ショールームは、製品やサービスを顧客に「印象的に紹介する場」であり、まさに彼が「活きる」場所だと直感したのです。
このキャリア転換の決断が彼のキャリアを大きく好転させました。ショールームでの彼のパフォーマンスは、瞬く間に評判になります。
どんな専門的なことも誰にでも分かりやすく、そして面白く伝えることから、驚くほど顧客の反応が良く、「どんな客でもその心を掴んでくれる」と、ついには役員、副社長、社長といった経営層からも信頼を得て、クライアント企業のトップ担当を任されるほどになりました。
その後、野口氏は全社的な顧客コミュニケーション改革プロジェクトを任されることになります。
既存の概念を捨て、ゼロベースで顧客体験を再構築するというプロジェクトは、彼にとってまさに「多くの人に驚きを与え、心躍らせる(エンターテインメント)」ノウハウをビジネスに応用するまたとない機会でした。
野口氏は「人がどうしたら弾けるのか」「人がどうしたら楽しめるのか」という独自視点からプロジェクトを牽引し、マーケティングや分析といった従来のビジネス手法とは異なるアプローチで、新しい価値を創造したのです。