アハブ王の死後、城門から突き落とされたイゼベル(写真:Mary Evans Picture Library/アフロ)
世界一のベストセラーといわれる「聖書」。フォロワー約11万人の「上馬キリスト教会ツイッター部」の中の人として聖書をわかりやすく紹介するMAROさんは、聖書が誕生した2000年前から人間の心や営み、本質は現代社会とほとんど変わらないと言う。
現代社会にいるあらゆる「残念な人」は、2000年前に記された聖書にもだいたい登場している。偉人と思われている人の「残念な一面」とは。
*この記事は、『聖書の中の残念な人たち』(笠間書院)の内容を一部抜粋・編集しました。
紀元前9世紀頃、北イスラエル王国にアハブという王様がいて、その王妃はイゼベルという人でした。このイゼベルさん、現代のクリスチャンからはいつも「悪女イゼベル」と呼ばれ、もう悪女の代名詞みたいに言われてしまっている人なんですけれど、さて一体どんなことをやらかしてしまったのでしょうか。
イゼベルはシドンの王女として生まれたので、バアルという神を信仰していました。ユダヤ教を信仰するイスラエル王国のアハブ王に嫁いだ後も、彼女はバアル信仰をやめようとはせず、むしろイスラエル王国にもバアル信仰を広めようとしました。
夫アハブも妻のために、「この国では父なる神ヤハウェだけではなく、他の神を信仰してもいいよ。そのための神殿や像を作ってもいいよ」という政策を行いました。このため、このアハブも「北王国の歴代の王の中でも類を見ないほどの暴君」と言われてしまっています。
つまりアハブとイゼベルの夫婦は「正しい神様を信じずに、他の神々を信じて偶像礼拝政策を推し進めた」ということで「暴君」や「悪女」と言われているんです。
たしかに聖書の立場、キリスト教やユダヤ教の立場から見れば、彼らは「悪」なのですが、その立場を離れて純粋に政治や国家運営の視点で見れば、彼らが行ったことはいわゆる「国際化」や「多様化」です。
