官僚の賃上げ、大企業に及ばず

 こうした中、政府の諮問機関である「人事行政諮問会議」は公務員人材確保に向けた最終提言を本年3月にまとめた。給与面では、「外部労働市場と比較して見劣りしない報酬水準」の重要性を指摘したうえで、「官民給与比較手法の見直し」や「現行の給与体系の抜本的見直し」などを提言した(図表2)。

図表2:人事行政諮問会議の提言

(出所:人事院)

 もともとキャリア官僚は「(民間大企業と比べて)忙しい割に給料が高くない」ことで有名であったわけだが、これまでは長時間労働の是正など「忙しさ」を改善するほうに重点が置かれてきた(例えば、国会対応業務の効率化など)。それがここにきて「給料」のほうに本格的に手を付けようとしているわけである。

 確かに、2010年代前半から今日に至るまで企業収益はほぼ一貫して伸び続けており、業績に連動する賞与は大企業を中心に大きく伸びてきた(図表3)。また、高水準の賃上げが実現する中で基本給も増えているので、大企業従業員の年収(給与+賞与)はこの数年、はっきりと伸び率が高まっている。

図表3:民間大企業の給与・賞与水準

(出所:財務省)

 公務員年収は基本的に民間会社員年収に連動するような仕組みになっているので、こちらも伸びてきているが、業績好調な民間大企業ほどには伸びていない。採用競合先である民間大企業と比較した際の相対賃金が低下すれば人を集めづらくなる・定着させづらくなるのは当たり前のことなので、そこに手を付けようとするのは自然な発想である。

 ただし、キャリア官僚の人気が低下しているのは、必ずしも「忙しい割に給料が高くない」ことだけが原因ではないだろう。むしろ、キャリア官僚離れの主因は、「やりがいの低下」ではないだろうか。