日銀植田総裁の金融政策正常化への決意は揺るがない?(写真:ロイター/アフロ)
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(河田 皓史:みずほリサーチ&テクノロジーズ チーフグローバルエコノミスト)

 霞が関にとって、夏は人事異動の季節である。次官や局長といった幹部が交代すれば、新任者の考え方によって行政運営のスタンスが変わることもあり得る。そのため、メディアを含め多くの人々が中央省庁の夏の人事を注視している。

 それと比べれば地味な存在だが、日銀職員の定例人事異動も夏(通常は6月)に行われる。局長級の幹部職員の人事は「時知らず」なことも多いが、課長級以下はこのタイミングでまとめて変わるのが通例である。

 日銀人事という点では役員人事も当然重要である。職員とは異なり、日銀役員は任期が決まっている(正副総裁を含む政策委員<9名>は5年、理事<6名>は4年)ため、交代のタイミングは数年先までスケジュールされている(図表1)。

■図表1:日銀役員の交代タイミング

(出所:日本銀行)

 結果として、役員が多く変わる時期もあれば、全く変わらない時期もあるわけだが、本年前半(正確には7月1日まで)は比較的役員交代の多いタイミングだった。また、役員人事の玉突きで局長交代も多く、正副総裁が交代した2023年春以来の大きな人の入れ替わりがあった格好である(図表2)。

■図表2:本年前半の日銀幹部人事

(出所:日本銀行、各種報道)

 特に、金融政策決定会合において投票権を持つ政策委員メンバーに変更があったのは、2023年春に正副総裁が交代し植田体制が発足して以降では初めてであり、決定会合での議論に新風をもたらすことが期待される。

 退任した審議委員はいずれもいわゆる「ハト派」色のあるメンバーであった(ハト派:緩和寄り⇔タカ派:引き締め寄り)。

 メーカー出身の中村委員は、「企業の稼ぐ力・賃上げ余力」の動向を慎重にみる必要があるとの考えから、この間の金融政策正常化(≒引き締め)方向の政策変更案に対して一貫して反対票を投じており(計6回)、直近1~2年は最もハト派色が強い委員と目されていた。

 民間エコノミスト出身の安達委員は、金融緩和に積極的ないわゆる「リフレ派」の一人とされており、就任時点ではハト派とみられていたが、審議委員在任期間中は中立的な立場をとることが多く、結果的には「ハト派寄りの中立派」といった立ち位置であった。

 では、新任の審議委員の顔ぶれはどうだろうか。