深化する産業政策、政府が戦略産業向けの投資ファンド立ち上げ
しかし、これだけの問題が山積しているにもかかわらず、中国が産業政策をあきらめる兆しは全く見えない。
むしろ習近平国家主席は「新たな質の生産力」というスローガンの下、最先端技術で先頭に立つ中国の野望を強めている。
これは基本的に「中国製造」の深化だが、技術的なイノベーションにより大きな重点が置かれるものだと北京交通大の李氏は解説する。
次のホットな分野がヒト型ロボットだ。
ただしアナリストからは、この技術の重要なブレークスルーはまだ何年も先で、短期的な商業利用は依然限られていると懸念する声も上がる。
中国は今年、政策立案者が優先するヒト型ロボットやその他の産業に投資を回すことを目指す1兆元規模の政府系ベンチャーキャピタル(VC)ファンドを立ち上げる計画だ。
5月には自給自足の「強い科学技術国家」を造る習氏の取り組みの一環として、複数省庁の連合が銀行の融資と保険業界の資本をこうした戦略的産業に動員するよう設計された政策を打ち出した。
北京経済技術開発区の幹部のリャン・リャン氏は、この開発区はロボットその他の技術向けの投資ファンドを立ち上げていると話す。
「すべての地域が独自の投資ファンドを持つようになるだろう。経済発展を加速させるためだ」とフィナンシャル・タイムズ(FT)に語った。
アウディのリーベック氏は、同社の長春工場で試験運用されている中国企業のヒト型ロボットは人間のような形状には変更を加えた方がいいものの、有望な技術を取り入れていると指摘する。
「我々は2本の腕(があるロボット)は欲しくない。欲しいのは、4本ないし5本の腕だ」と言う。
諸外国が迫られる難しい選択
産業政策を一段と強化する中国の決意を考えると、諸外国は数十年間にわたってサービスと商業主義に重きを置いた末に難しい選択肢を突き付けられるとブルノワ氏は話している。
さらに、補助金と産業政策の恩恵にあずかってきた中国の輸出品との競争に苦しめられてきた産業では一定の保護措置も必要になると指摘する。
「中国の市場の歪みはあまりにも大きく、あらゆるところで公正な競争を阻害している」とブルノワ氏は言う。
「生まれて間もない自国産業を保護するために、より高い貿易障壁を持たなければならない。それは多くの途上国がやることであり、クリーンテックのような一部の産業では、我々も今、その状況に置かれていると思う」