生成AIがこじ開けた「パンドラの箱」
飯吉:一般教養を軸にした4年制の大学にとっては、「地獄の季節」と言ったところでしょうか。
現に、アメリカでは2年制で、専門的な職業訓練が充実している「コミュニティ・カレッジ」が人気になっています。高い学費を払って、4年制の大学に行く必然性がどんどん薄れてきているのです。
背景には、インターネット上で高度な授業が無料で受けられるようになったことやオンライン大学の台頭などもありますし、生成AIを上手く活用すれば大学レベルの一般教養は網羅的に学ぶことができる可能性が出てきたということもあります。
一般教養を学ぶために4年制の大学に通うよりは、学費が安く、2年で卒業できて、卒業後は看護師や測定技師などの専門職にすぐ就けるコミュニティ・カレッジに進学するのは合理的です。
日本でも高等専門学校の人気が高まっていますよね。この間、ある国立大学大学院の工学専門の教授が、「高専卒の20歳の方が、国立学部卒の22歳よりはるかにレベルが高い。現場の技術や研究開発プロジェクトの進め方を体得しているからだ」と言われていました。現に、高専卒で学部に3年次編入して大学院に進学する優秀な学生は、教員からの評価も一般的に高いと聞いています。
生成AIはその驚くべきインテリジェンスで、各産業の職場で「パンドラの箱」を次々と開けています。当然ながら大学もその例外ではなく、現場の教員も右往左往させられています。生成AIへの対応については、世界的に見ても日本の大学の出遅れ感は否めませんが、日本でも遠からず、高等教育のあり方が根本的に問われる時代が来るでしょう。