再び原発推進へ「大転換」

 原発新設方針の公表という九州電力の動きと密接に連動しているのが、今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画です。国のエネルギー基本計画はおおむね3年ごとに改訂されますが、今回の改訂では、東京電力福島第一原発の事故後に必ず盛り込んでいた「原子力依存度を可能な限り低減する」との一文を初めて削除し、日本は再び原発推進の道を歩む姿勢を鮮明にしたのです。まさに、「大転換」です。

 新しい基本計画の特徴は「脱炭素」を旗印にして、再生可能エネルギーの拡充と原発回帰を軸に据えたことです。2040年度の電源構成(予測)を見ると、2022年度に約2割だった再エネは4〜5割程度に拡大。0.5割だった原子力も2割程度に増大します。他方、2022年度に7割を超えていた火力は、3〜4割程度にまで低減させるとの目標を掲げました。

図:フロントラインプレス作成

 日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすると国際社会に約束しています。その実現のためには、再エネの中で比重の高い太陽光発電、そして原発の活用が欠かせないのです。

 第7次エネルギー基本計画では、原発の「建て替え(リプレース)」も明示されました。老朽化した原発を廃炉にすれば、その分だけ新たな原子炉の設置を認め、政府が全面的に支援するというものです。しかも、建て替えは、必ずしも同じ原発で行う必要はありません。

 九州電力の場合、玄海原発(佐賀県)の1号機・2号機の2基が廃炉作業中ですから、新エネルギー基本計画の下では、その分だけ原発を新設する余地が生まれます。経済産業省はリプレース先を川内原発とする考えを持っているとされており、「川内・新原発」は次第に実現へ向けた動きが出てきそうです。同様に、廃炉作業が続いている関西電力美浜原発(福井県美浜町)の1号機・2号機もリプレースの有力候補と見られます。