大枚をはたいて瀬川を身請けした「鳥山検校」

 今回のドラマも「幕府パート」は少なく、その分、吉原遊郭について重点的に取り上げられることになった。

吉原遊郭吉原遊郭(明治後期、画像:イマジンネット画廊所蔵/共同通信イメージズ)

 キーワードとなったのが「身請け」である。身請けとは、遊女の身の代金や負債を支払って、身柄を引き取ることをいう。蔦重は瀬川が抱く自分への思いに気づかず、こんなことを言ってしまう。

「俺、お前にはとびきり幸せになってほしいんだよ。身請けされて、それこそ名のある武家の奥方やら商家のお内儀やらになってほしいんだよ。お前ならなれると思う」

 蔦重はそう言って『女重宝記』という本をプレゼント。遊女は世間知らずのために身請けした後に苦労することもあるという。そんなときに困らないように、必要な知識を学べる本を蔦重は渡したのだった。鈍感な蔦重に、瀬川も「はは、馬鹿らしゅうありんす」と思わず本音をつぶやいている。

 とことん女心がわからない蔦重だが、身請け金のことを考えれば、自分には無縁の世界だと考えたのも無理はない。一番下位とされる遊女でも、身請けには40両から50両と、現代の紙幣価値で160万~200万円もしたという。花魁となれば、身請け金は4000万円ほどが必要だったとも言われている。

 瀬川ともなれば、いくらで身請けできるのか。想像もつかないが、実際に身請けした人物がいた。今回の放送で初登場となった、市原隼人演じる鳥山検校(とりやま けんぎょう)である。

 今後の展開としては、鳥山検校が瀬川を身請けすることになるが、実際の鳥山検校が支払ったのは1400両。なんと1億4000万円相当というから、よほど瀬川に入れ込んだのであろう。

 鳥山検校がこれだけの財を築いたのは、高利貸しを行い、えげつない取り立てを行ってきたからであり、言うまでもなく周囲からの反発も強かった。幕府は鳥山検校に処分を下すことになるが、一体どんな顚末が待っているのか。瀬川の運命とともに見守っていきたい。