(写真:Akio Miki JP/Shutterstock.com)

 新しいNISA(少額投資非課税制度)で急増した個人株主の獲得に向け、企業が株主優待に力を入れている。2024年の優待新設ラッシュの勢いは2025年に入っても止まらない。今や優待実施企業は1500社を超え、上場企業の約4割に達している。

 優待内容もデジタルマネーやオリジナルポイントなど多様化し、長期の株主への優遇措置を導入する企業も多い。新NISAでは「オルカン」や「S&P500」の積み立て一辺倒という方も、これを機に成長投資枠を活用して現物株の優待投資を検討してはいかがだろう。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

長期保有株主を優遇するトヨタ自動車

 一時は縮小スパイラルかと不安視された株主優待が、ここに来て“完全復活”の気配だ。

 2024年に優待を新設した企業は前年比6割増の131社に上り、7年ぶりに過去最高を記録した。昨年来の新設企業の中には、これまで優待とは縁のなかった時価総額上位のトヨタ自動車やソフトバンクの名前もある。

 2022年4月の東京証券取引所の市場再編以降、株主への公平な利益還元に配慮し、優待を廃止して増配や自社株買いを実施する企業が相次いだ。大口の外国人や機関投資家の場合、優待は活用が難しく、「無駄なコストではないか」と捉えられてしまうことが多いからだ。そうした投資家を意識した株主施策の転換だったが、2024年からは明らかに潮目が変わっている。

 優待新設・拡充のターゲットは、新NISAで流入した個人株主だ。政策保有株、いわゆる「持ち合い」の株売却が進み、新たな安定株主の確保が急務となった企業には、優待を呼び水に勢いのある個人株主を取り込む狙いがある。

 そのため、昨今の優待の新設・拡充で目立つのが長期保有株主への優遇だ。

 例えば、前出のトヨタ自動車は100株以上で電子マネー(TOYOTA Wallet)500円相当だが、継続保有期間が1年以上で1000円相当、3年以上だと3000円相当となる。ヤクルト本社は、5年以上の株主には従来の優待品に加えてQUOカードを贈る。

 抽選方式の優待が増えているのも特徴だ。