米国市場がイースター休暇入りする前の9日にワシントンで行われたサマーズ国家経済会議(NEC)委員長の講演については、活動家が会場のホテルに乱入して公職就任前に金融機関から多額の収入を得ていた同氏の辞任を要求しつつ「われわれのカネを返せ!」と叫ぶ一幕があったことが、最も話題になった。
金融システム全体の正常化を意図していても、表面的には税金を投入した金融機関救済の形を取ってしまう政策に対して、米国内世論の反発が強まりやすくなっていることは、オバマ政権が短期間での金融正常化ではなく「持久戦」を覚悟せざるを得なくなっている理由の1つである。
サマーズ委員長の講演そのものの内容については、米経済が「フリーフォール」を数カ月以内に脱するだろうという見方が示された部分が、明るい材料として市場で話題になっていた。しかし、同委員長は講演で景気楽観論を前面に出したわけではない。発言の一部を引用しておこう。
「ボールがテーブルから落ちるような感覚――昨年秋の中盤以降の経済はそのように感じられたわけだが――それが今後数カ月以内に終わりを迎えるだろうということを、われわれは合理的根拠を伴って確信できるし、皆さんはそうしたフリーフォールという感覚をもはや抱かないだろうというのが、私の考えだ」
「たとえわれわれがプラスの経済成長に復しても、1%で成長している経済というのは、失業率の上昇を伴う経済だ」
「1カ月当たり60万人の雇用を失っている経済が、一夜にして、とてもハッピーな経路に移行することにはならない」
「近い将来のデフレ懸念は、完全に否定してしまうことのできるものではない」
「それ(米国が世界経済成長の唯一のエンジンであること)が先行きの成長の枠組みにはなり得ないことは明らかだ」