それで、好ましいプロンプトとは?

 それでは、生成AIの回答が正確で、偏りのないものにしたい場合には、どのようなプロンプトを入力すれば良いのだろうか?

 まず言えるのは、主観的な表現を避けるという点だ。

 感情的な表現、たとえば「好き」や「嫌い」、「いいね」や「ダメだね」などといった言葉は、主観的な評価や感想だと言える。そのため、そうした主観を削除したり置き換えたりする必要がある。

 たとえば「この報告書はひどい出来なので、問題点を洗い出して!」と入力するのではなく、「この報告書で修正可能な点があれば教えてください」のように表現するなどして、客観的に尋ねるのだ。

 また、語調にも気を付ける必要がある。何を知りたいのかを冷静に、明確に書くわけだ。

 たとえば、「〜してくれませんか」「〜について分析してください」といった丁寧で落ち着いた依頼文にすると、モデルも過度に感情へ引っ張られずに済む。市場分析なら「株価が暴落して最悪だ!原因を教えろ!」ではなく、「最近の市場変動について客観的に分析してください」にするといった具合だ。

 ポジティブとネガティブのバランスに配慮することも考えられる。

 内容上、やむを得ず感情的な側面に触れる場合でも、一方に偏りすぎない表現を心がけるのである。たとえば「良い点と悪い点の両方を挙げて下さい」と尋ねるなどの工夫が考えられる。

 論文内では、複数の異なるトーンを試すというテクニックも挙げられている。同じ質問内容でも、ニュートラル版・ポジティブ版・ネガティブ版と表現を変えてAIに投げかけ、出力の違いを比較してみるのだ。

 またその派生形として、段階的に深掘りするというテクニックが考えられる。いきなり感情的な問いを投げるのではなく、まずニュートラルな質問で大枠の情報を引き出し、その後で必要に応じて「では、リスク面も教えてください」「良かった点もありますか?」と追加で聞く方法だ。

 段階を踏むことで、最初の回答はバランス良く、その後ポジティブ・ネガティブ両面の掘り下げも可能になる。少なくとも、最初から偏った質問をするより安全なアプローチと言える。

 最後に、実際に実験してみよう。ChatGPTの最新モデルのひとつである、GPT-4.5にこんな質問をしてみた。織田信長について、その評価を感情的なプロンプトで聞いてみるという実験である。