ディスカッションから見えた課題と解決策

 OGCシンポジウム2025のハイライトの一つとして行われたパネルディスカッションでは、デジタル庁、総務省、自治体関係者、SaaS活用の専門家が登壇し、自治体DXの課題と展望について議論を交わしました。

 本ディスカッションのモデレーターは、一般社団法人オープンガバメント・コンソーシアム理事の高橋範光氏が務めました。

 セキュリティ、自治体のデジタル人材育成、アクセス管理のあり方について議論が深く掘り下げられました。

自治体DXのカギ握る「セキュリティ対策」

 まず議論の冒頭では、自治体DXにおけるセキュリティの重要性が指摘されました。

 自治体は、住民の個人情報や行政手続きを扱うため、デジタル化を進めるにあたり、セキュリティ対策を万全にすることが不可欠です。

高橋範光氏(モデレーター):

 「デジタル化を進める上で、最も重要なのはセキュリティです」

「自治体は住民の個人情報を取り扱っており、ひとたび情報漏洩が起これば大きな問題になります」

「そのため、DXの推進とともに、セキュリティ対策をしっかりと講じることが求められます」

 これを受けて、総務省の堀島佑月氏は、セキュリティ強化の法的背景について説明しました。

堀島佑月氏(総務省):

「地方自治法の改正により、自治体のデジタルシステムに対するセキュリティ基準が強化されました」

「クラウドシステムを導入する自治体も増えていますが、これに伴い情報保護対策を徹底しなければなりません」

 自治体がクラウドを活用する際には、適切なアクセス管理と情報漏洩防止策が不可欠であり、標準準拠システムの導入がその一助となると指摘しました。

石川紀子氏(掛川市副市長 CDO):

「自治体DXの大きな課題の一つは、職員のデジタルリテラシーの低さです」

「現状では、例えばBCCで送らなければならないメールをCCで送ってしまった、というレベルのミスが頻発しているのが実態です」

 この発言は、自治体職員のITスキルの現状を象徴するものとなりました。

 セキュリティの強化とデジタルツールの導入だけではなく、それを扱う職員の意識改革とスキル向上が不可欠であることが浮き彫りになりました。

 また、掛川市では、職員向けにデジタルスキルの研修を定期的に行っているものの、まだ十分とは言えない状況が続いているとのことです。

 これに対して、デジタル庁の吉田泰己氏は、自治体がデジタルリテラシーを向上させるための取り組みとして、アクセス管理を徹底する仕組みを構築する必要があると提言しました。

吉田泰己氏(デジタル庁):

「自治体DXを進める上で、最も重要なのはアクセス管理の適正化です。現在、各自治体のドメインでアクセスを管理し、どこからのアクセスなのかを明確にする仕組みを導入しています」

「これにより、未承認のデバイスや職員以外のアクセスを制限し、セキュリティの向上を図ることができます」

 自治体のDX推進において、職員の教育と同時に技術的なセキュリティ対策を強化することが重要であることが確認されました。