反撃に出るウクライナ、ESMでロシア軍の前線司令部を攻撃
この電子戦分野におけるウクライナ側の極度の劣勢は、3年に及ぶ戦闘の間、徐々に改善していきます。
確認された端緒は、2022年4月末、ロシア軍の前線司令部を攻撃したことでした。これは、ロシア軍の無線通信を傍受し、その内容を解析したか、あるいは複数の箇所から方位探知することで前線司令部の位置を把握して攻撃したものでした。この攻撃により、電子戦を担当する将官が死亡しています。
On April 30, using signals intelligence, Ukrainian defenders targeted and destroyed a command post of the Russian fascist invaders near temporarily-occupied Izyum. They killed a rashist general, Andrei Simonov. Ironically he was a senior commander in charge of electronic warfare. pic.twitter.com/AFooVZZ1uD
— Michael MacKay (@mhmck) April 30, 2022
これは、電子戦の中でもESM(Electronic Support Measures:電子支援対策)と呼ばれるものです。電子戦以外を含めた戦闘で活用してもらうため、敵の使用している電子情報を収集することを指します。
なお、アメリカ軍が定めている電子戦用語は、何度も変わっており、このESMという定義は、今では古いものとなっています。しかし、最近の定義は分かりにくいため、あえて本稿では他の用語も含め、古い用語で記述します。
上記のケースは、司令部を攻撃したものですが、ウクライナ軍がこのESMの成果を最も活用したのは、ロシア軍の電子戦装備の位置を把握し、それを攻撃、撃破することでした。
2022年から2023年の始め頃までは、こうしてロシアの電子戦能力を削ぐとともに電子戦機器の整備を進め、電子戦分野の劣勢を改善しようと図っていたようです。