資源利権提供はウクライナの秘策か
米露が突っ走ろうとしている中で、欧州は対ウクライナ支援で自らができることは何かを見極めるとともに、何とか反ロシア陣営に米を少しでも引き戻す策を追求せねばならない。
ヘグセスは欧州のNATO加盟国に国防費を自国のGDP比5%まで増額することを要求し、他方でウクライナへの米軍派兵はあり得ないとしている。
しかし、その双方を受け入れた米軍抜きでのロシアとの対峙態勢を1~2年で実現できるとは、恐らく欧州の誰も思っていない。
そこに、米国が抜けた穴を欧州で埋め合わせるべく、ウクライナ支援を積み増していったなら、どの国の財政も破綻しかねないし、国民の方がそれに黙っているはずがない。
となれば、米国の翻意を促す動きを続けるしか、目下のところは手が残されていないことになる。
ウクライナにとっても、対露での戦闘を継続しようというなら、米国からの武器と資金の支援を新規に確保せねばならない。
だが、その気はないと言い放つトランプ以下の米政府・議会幹部から、どうOKを取り付けられるのか。 その見通しが立たないなら、停戦和平に向けてのコンベヤーに乗るしかなくなる。
それを強いられるなら、見返りにウクライナの安保が間違いなく確保されることが最低条件だ、と言い続けねばならない。
その100%を今の欧州では満たせないことも分かっているから、結局はウクライナにも欧州同様に米国のバックアップが何としても必要ということになる。
署名されずに終わった米国とウクライナの間の鉱物関連合意書(ウクライナ領内の地下資源開発への米国の参加)なるものは、トランプ政権がウクライナに顔を向ける可能性を少しでも高めようとしたウクライナによる試みの産物でもあった。
トランプはこの合意をウクライナの安保に直接は結び付けていなかったが、その姿勢が「今のところは」であることにウクライナの期待は懸っていた。
だが、その筋書きも上述の通り、2月28日の米・ウクライナ首脳会談の決裂で御破算となってしまった。
同じような提案を、ウクライナは英国やフランスに対しても行っていたようだ。各国ともこれを、軍事を含めてこれまでウクライナに投下した資金回収の機会と捉える。
トランプとてこれに後れを取るわけにはいかない。それがいったんは鉱物関連合意書に同意した理由の一つなのだろう。
それとともに、援助やその返済での資金の流れを支援国側が、直接関与して管理する仕組みが必要だと米国側は考えていたはずだ。
援助のある部分がウクライナで消えてなくなるという話は、かねがね何度か表面化している。
その点で今の米政権は、ウクライナがまともに国家運営を行えている国なのかに懐疑的になっているようだ。
一説によれば、2月19日にキーウを訪問したケロッグは、ウクライナ大統領府長官・A.エルマークに2020年からこれまでのウクライナ当局によるデジタル通貨取引の詳細資料を渡し、米の和平案に反対するならウクライナ政府の腐敗を示すものとして、この資料を西側メディアに流す、とまで脅したと言う。
対米関係での問題を抱えたまま、3月2日にEUは米国から戻ったゼレンスキーを入れて、臨時首脳会議を開催した。
欧州としてできることへの様々な案が漏れ伝えられ、ゼレンスキーの対米関係修復に向けた発信が続く。
表とは別に裏では、今回のゼレンスキーの大立ち回りに対してEU首脳から散々「お叱り」があったのではなかろうか。
もしこれから先、米露間の取引でウクライナの運命が決められてしまったなら、ゼレンスキーはもちろん、欧州の為政者も雁首揃えてその政治的立場を失うことになる。
彼ら自身の運命も、米国を再度振り向かせるための新たな知恵が生まれるかどうかに懸かっている。
まずは、ゼレンスキーがしでかしてしまったトランプとの喧嘩の後始末を、米国と何とか付けねばなるまい。