複雑な形をした「ハウルの城」も、建築法規を遵守し必要な性能を満たした、れっきとした建築物だ。ジブリパーク全体のデザインを監修したスタジオジブリの宮崎吾朗監督と、何回もやりとりを繰り返して作品世界を表現したという。

「ハウルの城」。二次元の映画には描かれなかった部分もある。スケッチ、図面、3D画像、模型など、各段階で宮崎監督のチェックを受けながらつくりあげた(写真:ロンロ・ボナペティ)「ハウルの城」。二次元の映画には描かれなかった部分もある。スケッチ、図面、3D画像、模型など、各段階で宮崎監督のチェックを受けながらつくりあげた(写真:ロンロ・ボナペティ)

 日本設計建築設計群主管の西村拓真氏は次のように解説する。

「スタジオジブリのアニメーションづくりの姿勢に倣い、素材も本物にこだわりました。外装に使った特殊金属は耐候性試験を行ってデザインと性能の両立を目指しています。特に、来園者の手が触れる部分は素材感を意識し、五感すべてで作品世界を体験してもらえるように心掛けました」

 建物と建物の間をつなぐ街路の構造物にも本物の石やレンガを用い、現場で職人と相談しながらつくったそうだ。

授与式後の取材に応える日本設計の大山政彦氏(左)と西村拓真氏(写真:長井美暁)授与式後の取材に応える日本設計の大山政彦氏(左)と西村拓真氏(写真:長井美暁)

投票メディアごとに大きく異なる傾向が

 前述の通り一般投票は、X、InstagramとGoogleフォームの3つを使って行われた。メディアごとに1人1作品あたり1票しか投票できないが、複数作品への投票と、複数メディアによる投票は可能だった。

 結果を見ると、メディアによって明らかに投票傾向が異なる。

「みんなの建築大賞2025」最終投票結果の上位5作品(資料提供:みんなの建築大賞推薦委員会)「みんなの建築大賞2025」最終投票結果の上位5作品(資料提供:みんなの建築大賞推薦委員会)

 1位になった「おにクル」は3つのメディアすべてで多くの票を得たものの、Xでは「グラングリーン大阪」に、Instagramでは「ジブリパーク」に及ばなかった。Xに比べ利用者の年齢層が低いといわれるInstagramで「ジブリパーク」が首位に立ったのは納得感がある。

 XとInstagramでは、「みんなの建築大賞」アカウントによる作品紹介ポストに「♡(いいね)」を押すだけで票になる。それに比べ、Googleフォームでの投票は事務局である「BUNGA NET」「TECTURE MAG」の記事からリンクをたどる必要があるなど、多少手間がかかる。その投票方法で大きく他を引き離した「おにクル」は、市民の熱意に押し上げられたと見てもいいのではないだろうか。