創業者・梁文鋒の信念とは?
創業者の梁氏も若い頃から秀でた存在だったようです。
中国メディアなどの報道によると、小学校教師を父とする梁氏は中国南部の港湾都市で育ち、中学時代に独学で微積分を習得。精華大学や北京大学と共に優秀な人材が集まることで知られる浙江大学に17歳で進学しました。
専攻は電子情報工学。同大学大学院に進むと、「低コストPTZカメラを用いたターゲット追跡アルゴリズムに関する研究」という論文で修士号を取りました。ヘッジファンドの設立などに乗り出すのは、この頃のことです。
AIこそが世界を変えるとの強い信念を持つ梁氏は、The China Academyのインタビューでイノベーションの重要性を繰り返し語っています。
「純粋なビジネス主導ではなく、イノベーションには好奇心と創造的な野心が必要です。投資が増えればイノベーションが進むとは限りません。もしそうなら、大手ハイテク企業がすべてのイノベーションを独占しているはずです」
「イノベーションとは何よりもまず、信念の問題だと考えています。なぜシリコンバレーは革新的なのか? あえて挑戦しているからです。イノベーションには自信が必要であり、(資金がなくても)若者は自信を持っているものです」
ディープシークの躍進に対し、米国などは警戒感を強めています。安全保障上の問題はないか、米国企業の情報が盗まれたのではないか、中国には輸出が禁じられているエヌビディアのAI用半導体が迂回輸出されていたのではないか、といった懸念や指摘が続出。エヌビディアの半導体が中国企業に渡った経緯については法違反の疑いがあるとして、米連邦捜査局(FBI)が調べに入るとも報じられています。
しかし、米国がどのような出方を見せるにせよ、AIの開発競争で中国勢が重要なプレーヤーとなる流れに歯止めはかからないでしょう。
ディープシークのR1が発表された後の1月28日、中国の巨大IT企業・アリババは、同社が開発している大規模言語モデルのAI「Qwen」シリーズの最新版を公開しました。そのモデル「2.5-Max」は、ディープシークのR1のベースとなった「V3」に比べて高い性能を示しているとされています。
そう遠くない将来、中国発のAI関連ニュースが再び米国や世界を驚かせるかもしれません。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。