コルビー次期国防次官は、「21世紀のキッシンジャー」などと仰がれる45歳の若き軍事戦略家である。1期目のトランプ政権で国防次官補代理(戦略・戦力開発担当)を務め、2018年1月に公表された「国家防衛戦略」(NDS)の策定で、主導的な役割を果たした。
コルビー次期国防次官は、一体どんな軍事戦略を考えているのか。以下、タイミングよく日本で出版された新著『アジア・ファースト』(文春新書)からピックアップする。
アメリカが集中すべきは「中国の覇権を拒否すること」
始めに、2期目のトランプ政権の発足に伴い、アメリカ外交を「激変」させることを予見させるくだりだ。
「アメリカの外交エリートが間違ったことに集中し、間違った場所にはまり込んでいるのであれば、アメリカの外交エリートは変わるべきだ、というのが私の主張です。わが国の外交政策は新たな戦略的な状況に適応できていないし、過去30年にわたって『いい仕事』をしてきませんでした。アメリカ国民の多くは自国の対外政策にうんざりしています」(131ページ)
コルビー氏が何に不満なのかと言えば、ウクライナに多額の支援をし、勢力を傾ける現在のジョー・バイデン政権。ひいては、アフガニスタン戦争やイラク戦争を起こしたジョージ・ブッシュJr.政権までをも批判している。アメリカが集中すべきは、ヨーロッパでも中東でもなく、「中国の覇権を拒否すること」(拒否戦略)――この1点だと主張しているのだ。