袴田事件の反省をミリも理解していないのでは?
今回の強制性交等罪について、表向きは性行為の同意の有無よりも、被害者の抗拒(抵抗)を著しく困難たらしめるだけの暴行や脅迫があったのかが問われます。仮に動画により「いやだ」の拒否があったのだとしても、個別の証拠と法に基づいて裁判官が判断した内容に対して、証拠も判決文での認定内容も分からない段階で、報道やネットの情報を元に「不当」だから「裁判官を訴追すべき」というのは筋が違うでしょう。
いわば、報道をうのみにした有権者が、裁判官の法に基づく無罪の判断を気に入らないからと言って、無罪を有罪にしてレイプ犯を刑務所に送り込めというのであれば、袴田事件からの反省をミリも理解していない、実に「反人権」的な発想であり行動です。
また、法改正で大騒ぎとなった不同意性交等罪については、旧法であり、今回の処罰根拠法として吟味された強制性交等罪の改正プロセスにおいて、法務省や法学者、法曹界が何度も「処罰範囲を広げるものではない」と連呼してきた経緯があります。
◎性犯罪関係の法改正等 Q&A(法務省)
「今回の判断に至った旧法(強制性交等罪)では無罪だったが、新法(不同意性交等罪)では有罪になる」という解説も複数跋扈しているように見受けられますが、あくまで改正後の不同意性交等罪は「同意しない意思を形成し、表明し、若しくはまっとうすることが困難な状態」というより明確な要件に変更されただけです。不同意に基づく「暴行」「脅迫」「心神喪失」「抗拒不能」に当たるかどうかは個別で判断される以上、審理に当たって提出された証拠によっては新法によっても無罪になる可能性は充分に想定されます。