財政赤字の拡大は必至

 マスクは連邦政府の予算を2兆ドル削減することが目標だと話している。2兆ドルというのは、歳出のざっと3分の1に相当する額だ。

 だが、この目標は、米国の防衛予算だけでなく、トランプが増額を誓った社会保障費と維持を誓ったメディケア(高齢者向け公的医療保険)も削減しなければ達成できない。

 となると残るのは国内の裁量予算――教育やフードスタンプ、インフラなど――で、合計しても1兆ドルに満たない。

 マスクは財布の紐を握る権限を明け渡すよう米議会を説得できないと筆者は見ている。

 だが、議会はトランプ減税を成立させる。

 その正味の結果は、2024年で国内総生産(GDP)比6.4%と、すでに高水準に達している米国の財政赤字の拡大だ。

 財政赤字の拡大は借り入れコストの増大につながる。このコスト増大は中産階級にダブルパンチを食らわせる。

 まず債務返済費に食われる米国予算の割合が高まり、実質金利の上昇によって個人の経済状態も悪化するからだ。