「トヨタ1強」では盛り上がらない
今のところトヨタ系列の部品メーカーは概ね強いが、すでに日産系のマレリ(旧カルソニックカンセイ)は一度経営破綻し、同じく日産系の河西工業も経営危機が囁かれる。ホンダも創業以来付き合いがあった燃料タンクなどを造る八千代工業の保有株をインド企業に売却した。
日産系やホンダ系部品メーカーの中には今後、生き残りに苦しむところが出るだろうが、一方で「親同士」が組むことで事業拡大のチャンスは出てくる。
こうした視点から見ると、日産とホンダの協業を進めていくことは国益にも適っていると言えるだろう。
さらに言うと、日本の自動車産業はトヨタ「1強」では盛り上がらないし、健全な競争も起こらない。これも引いては産業の衰退を招くリスクがある。日産、ホンダ、三菱自動車という「非トヨタ連合」ができて、トヨタを脅かすような存在になればトヨタの尻にも火が付くだろう。
井上 久男(いのうえ・ひさお)ジャーナリスト
1964年生まれ。88年九州大卒業後、大手電機メーカーに入社。 92年に朝日新聞社に移り、経済記者として主に自動車や電機を担当。 2004年、朝日新聞を退社し、2005年、大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了。現在はフリーの経済ジャーナリストとして自動車産業を中心とした企業取材のほか、経済安全保障の取材に力を入れている。 主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)、『自動車会社が消える日』(同)、『メイド イン ジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『中国発見えない侵略!サイバースパイが日本を破壊する』(ビジネス社)など。