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12月8日、54年続いたシリアのアサド政権が崩壊した。反体制派のシャーム解放機構(HTS)が首都ダマスカスを制圧し、アサド大統領はロシアに亡命したとの報道がある。突然の崩壊劇はなぜ起きたのか。シリアが専門の東京外国語大学・青山弘之教授に聞いた。(前編/全2回)
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
(後編を読む)>>シリアに訪れる最悪シナリオ…過激派「イスラム国」復活ならトランプ米政権は介入へ、そしてプーチンはどう動くか
イスラエルとトルコの影
──54年間続いたアサド政権がシャーム解放機構をはじめとした反体制勢力の奇襲を受け、突如「崩壊」しました。主な要因はなんでしょうか。
青山弘之・東京外国語大学教授(以下、敬称略):歴史を紐解くと、シリアのように突然政権交代が起きた背景には他国の存在が見え隠れします。そして、新政権が発足すると、その国が得をすることが多いものです。
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1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」を運営。
論理的に考えた場合、アサド政権が倒れたことで利益を得るのは次の2国です。シャーム解放機構を間接支援していたイスラエルと、アサド政権に敵対するシリア国民軍を援助していたトルコになります。順を追って理由を説明しましょう。
まずはイスラエル。イスラエルは、2023年10月から続くガザ紛争を機に、イスラエルに敵対する勢力を無力化することに注力してきました。中でも最も優先度が高かったのが、イランが援助するレバノンのヒズボラです。
イスラエルはそのヒズボラをコテンパンに潰したと言っても過言ではないでしょう。最高指導者のナスララ師をはじめ、幹部の約半数を殺害しました。イランはイスラエルとの戦いで疲弊しきっています。