やり投げの選手を見て取り入れたこと

 ただ、実際の試合ではインパクトの瞬間に息を吐くのは難しく、一瞬、息を止めるような感じです。力を抜くぐらいのイメージをつけたいので、あえて練習のときに大げさにやっていたのです。

 これはオリンピックの投てき種目の選手たちを見ていて気づいたことです。やり投げの選手たちは「ウワーッ」と大声を出しながら投げるのを見て、なぜだろうと思ったわけです。実際に試してみると、そのほうが筋肉が伸びて体が大きく使えることがわかりました。だから打撃でも前の大きなスイングにつながると考えたわけです。

掛布の打撃論』(掛布雅之著、日本実業出版社)

 バッティングも深く追求すると形だけでなく、呼吸にまで意識が及ぶのです。私は構えに入る一瞬の呼吸をすごく大切にしていました。鼻から空気を吸って口から吐きます。鼻から吸って、6分ぐらい息を口からすーっと吐いたときに肩の力がストーンと落ちて、グリップを握った両手がアゴの前ぐらいに収まるのです。そこが一番力が抜けて、構えやすいところなのです

 だから腹筋もそんなに締めようとはしません。ヘソの下あたりに中心を感じて、体幹はしっかり安定させながらも、体の力は適度に緩める感じです。