二つのイメージとの戦い
こうした関係を築くために重要なことが、そのアスリートの持つ本当の魅力を知ってもらうことだ。それは、「なんとなくすごい」「なんとなく知っている」から「あの選手は〇〇がすごい」というところまで、多くの人たちのイメージを持っていくこと。
マネジメントの腕の見せ所である。
こんなふうに書いたのは、そのイメージの壁を何度も感じてきたからだ。その壁は主にふたつある。
ひとつが「競技のイメージ」。中谷選手のスポンサー営業をしていく中で、ボクシングが「危険な格闘技」であると捉えられていることを痛感した。
ある大手のメーカーに売り込みに行ったときには、「ボクシングには命の危険というリスクがある。広告では扱いづらい」とはっきりと言われた。
もうひとつが「ライバルのイメージ」。中谷潤人選手には、派手な言動も、ビッグマウスもない。そして、日本ボクシング界には井上尚弥という大スターがいる。
大スターはその競技の顔であり、華やかだ。ボクシングといえば井上尚弥というイメージはそう簡単に拭えない。
このイメージの壁は非常に大きく、他の競技にも当てはまる。メジャーリーグのシカゴ・カブスに所属する鈴木誠也選手は、日本人の右打者では初めての2年連続20本塁打を記録、リーグ打率ベスト10に入るなどアメリカでも屈指の打者となった。
しかし、野球といえば同級生の大谷翔平選手、そのイメージは絶大となる。
もちろん、中谷選手も鈴木選手のボクシング、野球において彼らをしのぐ選手となるべく努力を続けている。
特に「The Sky is the limit」(可能性は無限)を掲げる中谷潤人選手には、井上尚弥選手との対戦を待ち望む声が高まっている。階級が違うスーパースターに対し、ファンが潤人選手との対戦の可能性が取り沙汰されるのは、それだけ潤人選手の「強さ」が認知されてきているからだろう。
鈴木選手のトレーニングを見ていても、まだまだ成長の余地があるように見える。そのくらい競技への探求を怠らない。