4月2日の主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)を終え、オバマ米大統領は欧州歴訪を経てワシントンに戻る。初の国際会議で協調体制の演出には成功したものの、各国から追加景気対策の確約を取りつけるという最大ミッションは事実上失敗に終わり、ほろ苦いデビュー戦となった。
「世界的な不況からの脱出に向けた転換点となるだろう」。オバマ大統領は今回の金融サミットの歴史的意義をこう強調する。金融サミットで採択された全9ページ(29項目)の共同声明では、国際金融システムの最後の砦となる国際通貨基金(IMF)の融資能力を3倍まで高めるほか、保護貿易主義への反対を改めて表明した。
金融危機への再発防止に向け、米欧が対立してきたヘッジファンド規制や格付け機関の監視でも足並みを揃えた。さらに、脱税の温床と化していたタックスヘイブン(租税回避地)の「ブラックリスト」を経済協力開発機構(OECD)が公表し、非協力的な国・地域には制裁を科すという強い姿勢で臨むことを打ち出している。
最後までもつれたタックスヘイブン対策をめぐっては、サルコジ仏大統領が規制強化の急先鋒となり、合意できねば途中退席をも辞さない構えを見せた。これに対し、慎重姿勢を続けたのが中国。北朝鮮の資金洗浄の舞台となったマカオや香港を抱えており、サルコジ案を簡単に容認するわけにはいかない。
ホワイトハウス高官によると、仏中の間を取り持ったのがオバマ大統領だった。サルコジ、オバマ両大統領と胡錦濤国家主席は3度もこの問題で協議。オバマ大統領は側近を中国政府代表団に派遣して調整に当たらせ、3首脳の合意にこぎつけた。
ブッシュ前大統領時代の米国は、イラク戦争に代表される「単独行動主義」で欧州と徹底的に対立し、国際的指導力は低下した。国際政治だけでなく、地球温暖化問題や世界的な金融危機の対応でも孤立色を強めていた。
金融サミット閉幕後、オバマ大統領は「米国が世界を率いることはもはやできないという意見には賛成しない。世界における米国の立場は回復しつつある」と胸を張ったのは、国際的な利害対立の調整役として手応えを感じたためだ。
ミッション・インポッシブル
しかし、金融サミットが全てオバマ大統領の思惑通りに進んだわけではない。世界同時不況の脱出に向け、各国・地域から追加的な景気対策の確約を取りつけるという、重要なミッションには失敗している。
採択された共同声明で、G20は2010年末までに5兆ドル(約500兆円)の財政出動を行い、成長率を4%底上げすると表明。さらにIMFが同時点での世界経済の成長率を2%と予想していることを挙げた上で、「この結果を確実にするため必要なあらゆる手段を取ることを約束する」としている。